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その執事、同僚



「ほんなら簡単に裏を案内しますえ。付いて来とくれやす」



ジョーカーの案内でシエル達三人はサーカス内を移動する。



「まず、ここいらがあんさんらが寝泊まりしはるテント。裏方とか新人とか、いわゆる二軍<<塔oーが住むトコどす。大体2、3人が相部屋どすな」



テント内のあまりの狭さとボロさにシエルとダリアは顔を青ざめていた。



「ほんであっちが食堂と食料庫。新人のうちはまかないも大事な仕事どすから、おきばりやす」



そして奥の方へと移動。



「ここの一番奥が救護室な。そんで、ここから奥はメインキャストのプライベートテントどす」



セバスチャンの目が鋭く光った。



「プライベート?」

「ま、偉くなると個室がもらえるってこと。あ、それから、アレは蛇使いのテントどすから、近づかん方が身のためどすえ。毒蛇がぎょうさん放し飼いされとるから、噛まれたら一発であの世行きどす」



その証拠に一匹蛇が横切った。



「まーーーーたスネークも蛇も人見知りどしてなーー。新人さんは特に気ィつけんと」



話を聞きながら三人は視線を交わしていた。



「…そういえば」



歩いているとジョーカーが足を止め振り向いた。



「スマイルもリトルも、その右目と首どないしはったん?」

「えっ」



ドキッ、と二人は肩をはねた。



「あ…これは、事故で…リトルは病気の後遺症で声が出ないから…喉を傷つけないよう、に…」



隣でこくこくとダリアは頷く。すると、二人の頬にジョーカーは手を添えた。



「そらあ、ちっこいのに災難やったなぁ」



悲しそうに目を細めていたジョーカーはにこ、と笑うと頭をなで始めた。



「『??』」

「はぁ…」

「……」

「ま、ココにおる奴らも訳アリばっかりさかい、仲良うけしよーや」

「は、はい?」

『?』



肩を抱いてきたジョーカーになんだなんだ?と二人はタジタジ。



「皆さんは私達のように巡行中に入団された方なんですか?」

「んーー?」

「『?』」

「ほとんどがそーやけど、一軍メンバーは皆地元が一緒やねん。幼馴染みってやつやな」

「幼馴染みですか」

「ああ。でもスネークだけはまだ新顔なんよ。あいつの蛇の扱いは一級品やったし、丁度蛇使いもいおへんどしたさかい、最短でメンバーにならはったってワケ。一軍メンバーになれば御膳も優先さかいに、弱肉強食の奪い合いに参加せーへんでもええし、個人テントももらえるし。そないワケで皆、切磋琢磨して一軍を目指したはるワケどす」

「一軍を…」



最後に会場テント以外で一際大きなテントに来た。



「さ、ここが訓練場どす」



中に入ると、何人もの人達が様々な演目の練習をしていた。



「新人はここで訓練を重ねて、本公演デビューを目指しまんねん」



その時セバスチャンが何かに気づいた。



「まずはなんでも基礎からどす。きっちり準備運動してから…」

「ジョーカー!」



ん?と入口を見ると猛獣使いの女が。



「そろそろ出番だよ!」

「はいな」



最後に女はセバスチャンを睨んで去っていった。



「ほんなら三人共おきばりやすーーーー」












「一軍メンバーのプライベートエリアの入り口が、毒蛇のテントとはな」

『番犬ならぬ番蛇ってところね』



近くに人がおらず、周りが騒がしいことにダリアも小声で話す。



「本当に体が堅いですね」



セバスチャンに背中を押してもらっているシエルはほとんど倒れていなかった。ダリアは補助なしにぺたんと床につくほど体だけは柔らかかった。



「プライベートエリアに入りたければ一軍に上がるしかない…か」

『貴方なら毒蛇くらいなんてことないでしょう。子供達がいるかどうか』

「いませんよ」

「『え?』」



間髪入れずに言ったセバスチャンに二人は動きを止める。



「昨日の夜も先程の案内でも、このサーカスからは一切子供の気配を感じませんでした」

「だからと言って子供の失踪と無関係という証拠もない。隅々まで調べ上げるまでは、引き上げられないぞ」

「そうですね。私が気配を感知できない状態である可能性もありますし」

『え、んぎでもな、いことを言わないで…』



背中合わせにセバスチャンを持ち上げようとしているがやはり重そうに震えていた。



「彼女は子供達が無事に戻ることをお望みだ」

「かしこまりました」

『ていうか流れに任せていたけど、これって私とシエルでやればすむ「そういえば」話を逸らすな!』

「子供の気配が無いかわりに「オラーーーー!!お前らチンタラストレッチしてんじゃねーぞ!」



ぬっ、と持ち上げられていたダリアの視界にダガーの顔が。慌ててダリアは口を閉じる。



「あれっ?ダガー先輩公演は?」

「オレ今日トップバッター。もう終わったし、練習見てやるよ」



ストレッチをやめダガーの前に立つ。



「お前らはまず演目決めねーとな。希望は?」

「僕もリトルも綱渡りのように体を使う演目以外がいいんですが…切実に」

「なははーー。お前らひ弱そうだもんねーー」



原因は後ろで素知らぬ顔で笑っている悪魔なのだが。



「んじゃ、スマイルにはナイフ投げ、リトルにはジャグリングをみっちり教えてやるとして、ブラックは?」

「特に希望はありませんが」

「お前運動神経いいもんなーー。見ててやるから出来そーなモンやってみろよ」

「はい」



言われた直後セバスチャンはすでに動いていた。



「まずは、空中ブランコ」



そして。



「ポール登り」



さらに。



「火の輪くぐり!ハイワイヤー。トランポリン」



と、次々と見事な演技を見せるセバスチャンに歓声が上がる。



「次はーーーー」

「もういいもういい!!」



だろーな、と見ていた二人は顔を引きつらせる。



「すげーーっ!!」

「やるなブラック!」



わっっ、と皆がセバスチャンに群がる中、二人はすすす…と背後によった。



「おい!」

『調子に乗りすぎよ!』

「もう少し新人らしく「まいったねコリャ。またもや大型新人の登場かよ。負けてらんねーな」

「ほらもう目を付けられ…ん?…また?」



眉根を寄せながらどういう事だ?とダガーを見る。





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