×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
2



夜の闇を照らし出すかのように、淡く強い灯りが賑やかな広場を照らす。



「ここか」



シエル達の前にあるのは、一際目立つテントの入口。頭上の看板には「NOAH'S ARK CIRCUS」とあった。



「見たところ、なんの変哲もないように見えるが…」



辺りの様子を伺いながら、テントの観客席に座り開演を待っていると、テント内の灯りが消えた。



「レディス、エンド、ジェントルメーン。お嬢(トー)はん、アンド、旦那はーん!」



陽気な言葉と共に、ステージ上に照らし出された派手な男は軽く頭を下げた。



「本日は、ノアの方舟サーカスにようおこしやした。ウチは道化師(ジョーカー)と申しまんねん。どないぞお見知り…あてっ」



ボールでお手玉をしていたジョーカーが玉を頭に落としたことに、会場からは笑いが。



「オッホン!当サーカスには、皆サンを楽しませるショーが目じろ押しどすえ」



暗がりの背後に現れたサーカスメンバー達。



「さぁさぁそんなら、火吹き男のドハデな一発で、世紀のショーの幕開けどすえ〜」



大柄な男が火を吹けば、会場からはワッと歓声が。



「お次は息ピッタリの空中ブランコ」

『…』

「狙った的は外さない、百発百中のナイフ投げ!」

『すごい…』

「「……」」



仕事中という事も忘れて見入っているダリアに、シエルとセバスチャンが呆れた目を向ける。はっとしてダリアは少し顔を赤くしながらゴホンッ、と咳払い。



『え、演目も特に特別なものはないわね…』

「はあ…ああ」

「例の子供達が出演させられている様子も、ありませんしね」

《そしてお次はーーーー我がサーカスのお姫さんによる決死の綱渡り》

「子供達を見せ物にすることが目的でないなら、サーカスの移動と子供達の失踪はただの偶然なのか?」

《今度は世にも珍しい蛇と人間のハーフ。蛇男による華麗なる演舞!》



ーーーーパァン.



《そして最後は!サーカスの花形、猛獣使いのお出ましどすえ》



ムチを手に、セクシーをそのまま具現化したような女性がトラと一緒に現れた。



「このショーにはお客はんも参加してもらいたいんどすが…」

『最後のショーにも子供達は関係なしね』

「どうやら、観劇は時間の無駄だったようだな」



すると隣のセバスチャンが立ち上がった。



「?どうした?何か見つけ…」

「おっ!えろうヤル気満々の燕尾服のあんさん!!どーぞ壇上へ!」



ジョーカーが指さす先の燕尾服はセバスチャン。



「『なっ』」

「さぁ、こちらへおいでやす」

「『!!(そういうことか)』」



驚いていたが、二人はこれは奴らに接触するチャンスかと納得した。小さくシエルは言った。



「行ってこい」

「は」



返事を返し、セバスチャンはステージへと向かう。



「次々と子供達が消えてゆく怪事件。真相の糸口を掴むには、最早このサーカス以外ない」

『でも、接触することには成功したけれど、これだけの衆人の目よ』

「一体どう探りを入れるつもりだ、セバスチャン」



二人が高見の見物をしている中、セバスチャンはジョーカーの前まで来た。



「じゃあ、あんさんはこっちで寝そべってくれはりますか?」



ーーーースッ…



「あ?」



ジョーカーを素通りしたセバスチャンの行き先は…。



「嗚呼…何というつぶらな瞳…」

「『!!』」



虎にうっとりと触れるセバスチャンに会場は騒然。驚いていた二人はそこで「しまった」とはっとした。



「『(虎は猫科だ!!!)』」



アイツそれにつられて行っただけか、と二人ともと顔をひきつらせた。



「見た事も無い鮮やかな縞模様、柔らかい耳…とても愛らしい。おや?少々爪が伸び過ぎている様ですね、お手入れをしなくては…」

「『……』」



ポカーンと会場中がなっている中、二人は見ていられず両手で顔を覆っていた。



「肉球もふくよかで、とても魅力的ですよ」



と、セバスチャンが虎の手をとった時だった。

ーーーーガブッ.



「あ」



虎に頭から噛まれたセバスチャンに、会場からは悲鳴が。呆気にとられていた猛獣使いの女は、はっとムチをふるった。



「ベティ!!そいつを離しな!!」



ーーーーバシィッ.



「彼女に罪はありませんよ」

「!?」



振り向く事なくセバスチャンはムチをつかみ止めた。



「あまりの愛らしさに、私が思わず失礼をしてしまっただけ…」



「それに」とセバスチャンはムチに口付けながら言う。



「むやみに鞭を振るうだけでは、躾は出来ませんよ」

「ッ」



ーーーーがぶ.

再び噛まれたセバスチャンに再び悲鳴が。

キャー!!
ヒー!
ギャー!!




「ベティ!!ペッシなペッッッ!!!」

「おやおやおてんばさんですねぇ∨」













「『誰があそこまでやれと言った?』」



色々あったがなんとか公演が終わり、三人は外に出ていた。



「申し訳ありません。長い間生きていますが、猫だけは本当に気まぐれで気分が読めませんね…」

「『………』」



不機嫌極まりない二人に対し、セバスチャンは満足そうだった。



「大体必要以上に目立ってどう…ふ、へくしっっ」

『あら…セバスチャンに反応したのかしら』

「お前、僕が猫アレルギーなのを知ってるだろう!離れて歩けッ」

「は」

「あっ!いたいた!ちょっとそこの」



さっさと先をいく二人に続こうとしていたセバスチャンは、声に足を止め振り向く。



「燕尾服のあんさん!!」



走ってきたのはジョーカーだった。



「さっきはえろう、すんませんでしたなあ」

「いえ、こちらこそ失礼しました」

「ビックリしましたえ。急に虎に近寄っていかはるから。さっき噛まれたトコ、大丈夫どすか?」

『シエル』



後ろの様子に気づいたダリアがシエルに知らせると、二人はサッと隠れた。



「とにかく、ウチに専属のお医者はんがいはるんで、診てもろた方がええと思て」



次に言われた言葉は願ったりかなったりの言葉だった。



「どーぞ裏へいらしてください」



聞いていた二人は目に力を込めた。ニヤッ、とセバスチャンは笑うとすぐに笑顔を。



「では遠慮なく」





next.
_56/212
[ +Bookmark ]
PREV LIST NEXT
[ NOVEL / TOP ]