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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
その執事、想像





「本校は英国の中枢を担うエリートを輩出してきた名門。創立以来何百年も守られてきた伝統を、僕らの代で穢すわけにはいかない。ウェストン校の歴史は、英国の歴史なんだ!」



そう訴えるブルーアーの目は信じて疑わない。何よりも誰よりも、守るべきはウェストン校。



「(教育と洗脳は紙一重。まるで伝統の奴隷だな。それを6年間続けた奴らを論破したところで時間の無駄か)」



主張の崩れる様子のなさと、今すべき目的からシエルが出した答え。



「…わかった」



答えたシエルを、セバスチャンは軽く目を丸くさせ見下ろす。



「今回の件…僕はさる高貴なお方の命で調査をしていた。真相を知ったからには黙っているわけにはいかない。しかし」



ニコッ、とシエルは人の良さそうな笑みを貼り付けた。



「情状を鑑みた処置をお願いしよう」



胡散臭い笑みと中身のない台詞に、ダリアもセバスチャンも思わず笑みを浮かべ笑っていた。



「さあ、後はお前だ」



睨むようにシエルは悠々と席に座る葬儀屋を見た。



「お前の目的は何だ!?」



頬杖をつき口元に笑みを浮かべる葬儀屋は逃げる様子も見せず、余裕の様子。



「さっきたくさん笑い(お代)をもらったし、昔のよしみで教えてあげようかねぇ〜〜〜」



ヒッヒッ。笑いながら葬儀屋は、盛り付けられたカップケーキを一つ手に取る。



「一瞬ではあったがデリックは確かに意識があった。以前の動く死体とは明らかに違う…いや、進化している!」

「嬉しいこと言ってくれるねェ。そうさ」



もぐもぐと咀嚼し、ごくんと飲み下す。



「死者も進化できる。素材があればね」

「素材…?」



眉を潜めたセバスチャンは思い出す。



「貴方が作った偽の記憶の事ですか?それを死者の走馬灯に繋ぐ事が、動く死体の秘密だったはず」

「ブブーーーー」



手でバッテンを作って見せた葬儀屋はしかし、「おしいけどね」と続けた。



「あんなテキトーなものじゃない。今、彼らを動かしているのはーーーー未来への願望」



今際の際、人間は歩んできた過去を回想する。それが走馬灯。それと同時に歩むはずだった未来を、断片的ではあるにせよ渇望する。その欠片こそ素材。



「それはさながら未来予想図。小生の偽の記憶とは比べ物にならない、未来の記憶。もしそんなシロモノを走馬灯に繋いだらーーーー完成すると思わないかい?」



ーーーー限りなく人間に近い、動く死体が!!



「ま、成功率はまだまだ低いんだけどねェ〜。素材の量とその質に左右されるし」

「……わからない」



呆然と話を聞いていたシエルとダリアの頬を、汗が伝う。



「なぜそんなことをする!?死者を蘇らせてなんになる!?」

「小生は、定められた終わりの先を見たいだけさ」



茶化す気配なく素直に答えた葬儀屋の言葉に、ダリアは訝しそうな顔をする。



『終わりの…先?』

「キミらは考えたことがないのかい〜?」



舞台俳優のように星空へと両手を突き上げ、葬儀屋は前髪で目元を隠しながらも笑顔を浮かべた。



「エンドロールの先にもっともっと面白い展開が待っているかもしれないって」

「そこは気が合いませんね」



セバスチャンが答える。



「死≠ニは絶望的で絶対的な終わり≠ナあるからこそーーーー美しい」



悪魔の片鱗をちらつかせたセバスチャンに、葬儀屋はふっと薄く笑った。





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