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「ああああーーーー!!?」

「フハハハハ。こんな手に引っかかるなんてバカめ!!」



割れてしまった卵に絶叫するソーマを見下ろしながらシエルが高らかに悪役顔負けの勢いで笑う。



「シエル〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

「フンッ。僕は勝つためには手段を選ばな…」

「よかった!また病気かと心配しただろう!!」

「シエル様!ご無事でようございました!!」



泣きながら安心したようにソーマとアグニが挟み込む形でシエルを抱きしめた。

【ソーマ&アグニチーム脱落】



「がんばれよ〜!」

『…ぷっ…』



後ろから負けておきながら応援するソーマとアグニ。ばつが悪そうに赤くなりながらその場を去るシエルの後ろでダリアはふきだし、セバスチャンも笑うのを堪えていた。



「坊ちゃん、卑怯な行いにあの様なリアクションをされて今どんなお気持ちですか?」

「うるさい黙れ!ダリアも笑うな!」

『……ふふ…っ』



そんなこんなで次にやってきたのは天井から豪華なシャンデリアがつり下がった部屋。ダンスホールのようで床はきれいに磨かれているが、隠せるような場所は特に見当たらない。



「リジーのことだ、そう厄介な所には隠していないはず…」

『分からないわよ?あの子やる時はとことんやる子だから、思いもしない所にあったりして』

「………お嬢様。その読みはアタリの様ですよ」

「『え?』」



振り向いたシエルとダリアはセバスチャンが見上げる先を見た。



「『なっ…!?』」



エリザベスのイースター・エッグは、シャンデリアのろうそく立てにちょこんと置かれていた。まさに、思いもしない所だった。



「どうやって置いたんだアレは!?」

「レディの事ですから…」



せえぇぇぃやっ。と軽業で乗せたのだろう。



『そこまでしなくても…』

「と、とにかくアレを取って来い!」

「良いのですか?」



横目にセバスチャンがシエルを見下ろす。



「あれは坊ちゃん自ら手に入れてこそ、価値がある物なのでは?」

「うぐっ………それは…」

『…今回は仕方ないんじゃない?』



ハイ卵どうぞ、とおたまを差し出してきたダリアにシエルは少しの間の後卵を受け渡した。



「チッ…脚立を持って来い」

「は」



で、セバスチャンが持ってきた脚立にシエルは登る事に。



「ちゃんと押さえてろよ」

「はい」

『大丈夫ーシエル?』

「ぐ、ぐらぐらする」



上まで登ってイースター・エッグに手を伸ばすがバランスが悪くなかなか届かない。



「あと…少しっ…」



ーーーービッ.



『え…!?』



ーーーーキィン!



「うわっ」



ダリアが持つ卵めがけ飛んできたおたまをセバスチャンがおたまで弾いたが、そのせいでシエルが脚立ごとバランスを崩した。ら、その反動でイースター・エッグがシャンデリアから離れてしまった。



「ッ!!」



シャンデリアに捕まったシエルが何とかイースター・エッグはキャッチした。



「やはり来ましたね」



着地したセバスチャンの前に二つの影。



『Wチャールズ!』



ぱしっとグレイが弾かれて戻ってきたおたまをキャッチ。



「悪いけど、優勝はボクらがもらうよ!!」



向かってきたグレイにセバスチャンがダリアの前に立つ。



「お嬢様下がって!」



ガキィッとセバスチャンとグレイのおたま同士がぶつかり合った。



「お前絶対ヤッたと思ってたんだけどなァ。どんな手を使ったの?」

「どんな手とは?何の事やら」



互いに嫌な空気を出し合いながら笑みを浮かべる。



「おっと」



背後のダリアの卵にフィップスがスネークに使用した笛を伸ばすが、それをセバスチャンがシエルのおたまで弾く。その流れでフィップスが持つ卵に目をやったセバスチャンに、グレイが口を開いた。



「まさか、使用人ごときが貴族であるボクらに攻撃しようなんて思ってないよね?」

「『!』」



セバスチャンの動きが止まった。



「できるワケないよねぇ!?アッハ!」



振るわれたおたまをしゃがんで避ける。



『たかがゲームに身分もクソもあるかっつの!!』

「僕が許す!卵を割れ!」

「いけません!そんな事をしてはファントムハイヴ家の名に傷が付きます!」



二人ぶんの攻撃を避けながらセバスチャンは言うと、着地と同時に小声で言った。



「あと10秒お待ち下さい」

「『!?』」



二人にだけ聞こえる声量で言うと、またセバスチャンは攻撃を防いでいく。



「たかがゲームだろうが、ボク負けんの大っ嫌いなんだよね!!」



10.



「それに」



9.



「抵抗できない相手を甚振るのって、最っ高!」

『…こ、んの野郎…ッ』



8.

7.

6.

5.



「う…腕が…ッ」



4.

3.



「これで終わりだ!!」

『!』



2.

1.

ーーーーパキッ.



「「「『!?』」」」



ダリアの卵にグレイが腕を伸ばした時、なんとフィップスの卵に突然ヒビが。どういう事かと驚く中、セバスチャンだけは笑みを浮かべていた。



「ピイッ」

「なっ…」



卵からなんとひなが孵った。



「何コレ!?」

「おやおや。どうやら有精卵が混じっていた様ですね」

「はあ!?」

『…ふ…』



ニヤリとダリアは顔を青ざめるグレイに笑う。



『残念ねぇグレイ伯爵。このゲームのルールは「どんな理由であれ卵が割れれば失格」。つまり…』

「負けだな。割れちゃった」

「ピヨ」

そっ…んな…」



【グレイ&フィップスチーム脱落】



「ふー、やれやれ」

「坊ちゃんもお疲れ様でございました」



下におりたシエルは痺れた手を振るのを止めるとセバスチャンを見上げた。



「…最初から仕込んでたな?卑怯はどっちだ」

「未来の夫人の前で主人に恥をかかせる訳にはまいりませんから。それに…」



ん?とシエルはセバスチャンの視線の先を見る。



『大口をたたく方ほど負けるものですよ』

「相っ変わらず可愛げないよね君…!」

『何とでも仰って下さい。勝ったのはコチラですから』

「〜〜〜〜ッあームカツク!!」



清々しい笑顔でダリアは地団駄を踏むグレイを見ていた。



「お嬢様の為にも、グレイ伯爵には負けて頂かなくては」



してやったり顔でセバスチャンはウインクをしていた。隣でシエルはまぁいいかとため息。色々ありながらも、エリザベスのイースター・エッグは手にすることが出来たのだから。



「あ!!」



庭には先に脱落した者達がすでに集まり席についていた。シエル達がやってくるとエリザベスが笑顔を浮かべて席を立つ。



「ホラ」



手にしたイースター・エッグを見せれば、「やったあ!」とエリザベスはシエルとダリアに嬉しそうに抱きついた。



「やっぱり一番に見つけてくれたのねっ!」

『当たり前でしょ』

「昔と一緒だ」

「ふふっ。そのイースター・エッグがシエルとダリア姉様にいーっぱい幸せを運んでくれますように!」



ほんのり頬を上気させながら無邪気に微笑むエリザベスに、二人も微笑み返した。



「『ありがとうリジー』」



こうしてエリザベスのイースター・エッグをかけたゲームは幕を閉じた。



「あーもーやってらんなーい、お腹すいたー」

「優勝とはさすが俺の親友だ!」

「シエル!割ったら許さんぞ」

「おいしそー」

「だいたい妹はお前なんかにはもったいないーーーー…」



騒ぎながらテーブルへと席をついて行く面々を眺めていたエリザベスは、うさ耳カチューシャを頭から外した。



「(ねぇシエル…ダリア姉様…あたし達何度も一緒に復活祭をお祝いしてきたよね。でも)」



談笑しながらテーブルへと向かうシエルとダリアの背中を、エリザベスはもの言いたげに見つめた。



「(あたしがイースター・エッグを作ったのは、今年が初めてよ)」



シエル…。

ダリア…。

あの1か月で、貴方達に何があったのーーーー?

















「ってそーだ」



早速食べていたグレイがテーブルに近づいてきたシエルとダリアに顔を向ける。



「ボクら遊びに来たんじゃないんだ」



立ち止まった二人の前にグレイが懐から手紙を取り出した。



「はいコレ」



差し出された便箋の封蝋を見て、シエル、ダリア、セバスチャンは眉を寄せ顔をこわばらせた。



「ラブレターだよ」





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