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喧嘩はグーでやるべし




『だるーい。やめたーい。帰りたーい。寝たーい』
「オイ、ぐだぐだいってねーでさっさと終わらすぞ」


久々の依頼で屋根の修理の手伝いに来た私と銀ちゃん。しかしもう二時間近くはやって体力的にも精神的にも疲れた私。


『てか銀ちゃんって何気器用だよね。昔から思ってたけど』
「お前とは格の差があんだよ」
『んだとパーが』
「うるせェ童顔。いいからそこの板とれ」
『はいは…』


ーーーーガッ.


『うォ!!』
「バッ…!」


束ねてあった木の棒に躓いた私は屋根から落ちそうになったが、間一髪銀ちゃんに引っ張られ助かった。


「ったく、何やってんだよ」
『ありが…あ』
「ヤベ」


私が躓いた束ねてあった木の棒が転がっていく。あ、コレもう間に合わない。慌てて下を見れば二人組の男がいて、このままではそのウチの一人に当たる。


「『おーい兄ちゃん危ないよ』」
「!!うぉわァアアアア!!」


ーーーーガシャァン.

おお。スゴい反射神経。除けたぞあの男。


「あっ…危ねーだろーがァァ!!」
「だから危ねーっつったろ」
『しかも二人係で』
「一人係でももっと声でるぞ!もっとテンションあげて言えや!わかるか!!」


梯子で下へと下りる私らに男は怒鳴りつける。そんなに怒らなくても。


「うるせーな。他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」


ホントホント。私らはメットを取って相手を見る。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!てめーらは…池田屋の時の…」
「『?』」
「そぉか…そういや男、てめーも銀髪だったな」


え、誰この人。勝手に一人で納得されても。


『銀ちゃん知り合い?』
「いや…えーと、君誰?」


どーやら銀ちゃんの知り合いではないようだ。え、じゃあ誰?


「あっ…もしかして多串君か?アララすっかり立派になっちゃって」
『…ああ、うっそ多串君!?アララ〜久しぶりだねェ元気?』
「なに?まだあの金魚デカくなってんの?」
「オーイ!!銀さん、架珠さん、早くこっち頼むって」
『うーす』
「じゃ、俺ら仕事だから」


私らはそこで多串君と別れ仕事に戻った。…でもごめん。多串君すら誰?





「バカヤロー金槌はもっと魂こめてうちこむんだよ」
「おめーの頭にだったら魂うちこんでやるよハゲ」
『呪いという名の魂うちこんであげる』
「コノヤロー人材不足じゃなかったらてめーらなんて使わねーのによォ。そこちゃんとやっとけよ」
「おめーもなハゲ」


ーーーーガッ.

ん?ガッ?


「爆弾処理班の次は屋根の修理か?」


あり?多串君?


「節操のねェ野郎だ。一体何がしてーんだてめェらは」


え、何言ってんの?てか爆弾……あ!


「爆弾!?あっ…お前あの時の」
『いきなり襲いかかってきた瞳孔開き気味の奴』
「うるせェ!蝉の抜け殻みたいな顔した奴に言われたくないわ!!」
『んだとゴラァ!!』


なんだこの瞳孔!!鉄柱が貫けば良かったのに!!


「あれ以来、どうにもお前のことがひっかかってた。あんな無茶する奴ァ、真選組にもいないんでね」


ああ、そっかコイツ真選組の奴だった。


「近藤さんを負かす奴がいるなんざ、信じられなかったが、てめーならありえない話でもねェ」
「近藤さん?」
「女とり合った仲なんだろ」


もしかしてこないだのストーカーゴリラのこと?え、何アイツも真選組なの?ストーカーなのに?


「そんなにイイ女なのか。俺にも紹介してくれよ」


言うと多串君は銀ちゃんへと持っていた刀を投げ渡した。


「?お前、あのゴリラの知り合いかよ…にしても何の真似だこりゃ…!!」


ーーーーガキィィン.


「ぬをっ!!」
『銀ちゃんっ!!』
「あだっ!!あだっ!!あだっ!!」


いきなり向かってきた奴の刃を瞬時に自身が持っていた刀で銀ちゃんは防ぐ。屋根を転がりながらもなんとか落ちずにすんだ。


『ちょ、なんなのアンタ!?』
「うるせェ。外野は黙っとけ」


いやいや無理だろ!!なんなのマジ!?


「おい、何しやがんだてめェ」
「ゴリラだろーがなァ、真選組にとっちゃ大事な大将なんだよ。剣(こいつ)一本で一緒に真選組つくりあげてきた、俺の戦友なんだよ。誰にも俺達の真選組は汚させねェ。その道を遮るものがあるならば剣で…」


ーーーーザッ.


「叩き斬るのみよォォ!!」


ーーーーガゴォン.

銀ちゃんへとおもっくそ刀を振り下ろした多串君だったが、後ろへと銀ちゃんはまわっていた。


「刃物プラプラふり回すんじゃねェェ!!」


多串君の頭を蹴った銀ちゃんだったが、下から多串君に肩を斬られてしまった。


「なんだ?オイ。銀さーん架珠さーん!てめっ、遊んでたらギャラ払わねーぞ!!」
「うるせェハゲェェェ!!警察呼べ警察!!」
『不審者いる不審者!!』


向こう側にいるハゲに私らは叫ぶ。


「俺が警察だよ」


ムク、と起き上がった多串君。


「あ…そうだった…世も末だなオイ」
『ストーカーもいれば不審者もいるなんて』
「ククク、そーだな」


銀ちゃんを見れば肩からは結構な量の血が出ていた。私は自分が持っていたタオルを銀ちゃんへと渡す。


『ほい銀ちゃん』
「お、サンキュー」
『さっさと終わらせて病院いくよ』
「そーだな」


立ち上がり銀ちゃんは今まで抜かなかった刀を鞘から抜いた。


「うらァァァァ!!」


銀ちゃんへと勢いよく刀を振り下ろした多串君だったが、斬ったのはタオル。横へと素早く避けていた銀ちゃんは多串君へと刀を振り下ろし、刀を折った。それに驚いている多串君は、自分が斬られると思っていたんだと思う。


「はァい終了ォ。いだだ、おいハゲェェ!!俺ちょっと病院行ってくるわ!!」
「待てェ!!…てめェ、情けでもかけたつもりか」


そんな理解出来ないみたいな顔しなくても。


「情けだァ?そんなもんお前にかける位ならご飯にかけるわ」


まずそーだね。


「喧嘩ってのはよォ、何かを護るためにやるんだろが。お前が真選組護ろうとしたようによ」
「…護るって、お前は、何護ったんだ?」


そんなの決まってんじゃん。


「俺の武士道(ルール)だ」


思った通りの答えに自然と私は笑みがこぼれた。


「行くぞ架珠」
『んー。あ、多串君。壊した所直しといてね』
「多串じゃねェェ!!」


アレ?違うの?まあいいか。屋根へと寝転がった多串君を残して、私らは病院へと向かった。













「ワリィ近藤さん。俺も負けちまったよ」


next.

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