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一度した約束は死んでも守れ




「命張って爆弾処理してやったのによォ。三日間も取り調べなんざしやがって腐れポリ公」
「もういいじゃないですか。テロリストの嫌疑も晴れたことだし」


ぜんっぜんよくないよ。あの後私らはヅラの仲間と疑われ三日間ずっと取り調べをうけていた。


「どーもスッキリしねェ。ションベンかけてこう」
「よっしゃ。私、ゲロ吐いちゃるよ」
『じゃあ私は壁に悪口書いてやろ』
「器の小さいテロすんじゃねェェ!!アンタらにかまってたら何回捕まってもキリがないよ。僕先帰ります。ちゃんと真っすぐ家帰れよバカトリオ!!」


そう言って新八はサッサと行ってしまった。


『なにアイツ母ちゃん?』
「オイオイ。ツッコミいなかったらこの小説成立しねーぞ…しゃーねぇな。今回は俺がツッコミでいくか」
『えー銀ちゃんじゃムリッしょ。ここは私が「オェ!」


――――ビチャビチャ.


「おまっ…どこにゲロ吐いて…くさっ!!」


ちょっ、神楽の奴マジでゲロ吐いたんだけど!しかも銀ちゃんの足下に。そして物凄い悪臭なんだけど!くさっ!!

――――ピイイイイ.


「『ん?』」


笛の音がして上からの気配に目をやると塀の向こうからオッさんが降って来た。しかしオッさんが着地した場所は神楽のゲロの上。滑ったオッさんはおもっくそ頭を地面に強打した。


「いだだだだだだ!!それにくさっ!!」


何やってんだ?すると役人が走ってやってきた。


「オイそいつ止めてくれ!!脱獄犯だくさ!!」
「『はィ?』」


え、脱獄犯?


「チッ」
「!!」
『神楽!!』


神楽がオッさんに人質にとられた。


「来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか」
「貴様!!」
「オイ、そこの白髪か金髪。免許もってるか?」
「普通免許はもってっけど」
『私はもってない』







「『なんでこ〜なるの?』」


誰か答えてくれ。

神楽を人質にとられた私らはとりあえずオッさんの言うとおり車を運転する。


「…おじさーん。こんな事してホント逃げきれると思ってんの」
「いいから右曲がれ」


神楽のんきに寝てるし。


『今時脱獄完遂するなんて、宝くじ一等当てるより難しいって』
「逃げ切るつもりはねェ…今日一日だ。今日一日自由になれればそれでいい。特別な日なんだ。今日は…」


…まあ、とりあえずつきあってやるか。


「みなさーん。今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコ!」
『『『とうきびウンコォォ!!』』』


………は?


「今日は浮世の事なんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!」
『『『ネクロマンサー!!』』』
「じゃあ一曲目お前の母ちゃん何人?=I!」


なにその曲。


「…なんだよコレ」
「今人気沸騰中のアイドル寺門通ちゃんの初ライブだ」


あー…なんかテレビで言ってたな。つーか…。


「『てめェェェ人生を何だと思ってんだ!!』」


我慢ならず私と銀ちゃんはオッさんの頭に踵落としをお見舞いした。


「アイドル如きのために脱獄だ?一時の享楽のために人生棒にふるつもりか」
『そんなんだからブタ箱にぶち込まれるんだよバカヤロー』


私らは半目になってオッサンを見る。


「一瞬で人生棒にふった俺だからこそ、人生には見落としてならない大事な一瞬があることを知ってるのさ」


その一瞬が今なワケ?


「さあ楽しもう!!L・O・V・Eお・つ・う!!L・O・V・E…」


なにこいつ…呆れてなんも言えないし。


「やってらんねェ。帰るぞ神楽」
「え〜もうちょっと見たいんきんたむし」
「影響されてんじゃねェェェ!!」


ちょっと影響されないでよ神楽。

暇な私らはとりあえず外に出ることにした。その際改めて周りを見てみると、あまりにも熱狂的すぎて氷点下の如く目が冷めていく。


「ほとんど宗教じみてやがるな」
『なんか空気があつくてくさい気がする』
「!おい架珠」
『え?…!』
「もっと大きい声で!!」


私らはある人物に近づく。


「オイそこ何ボケッとしてんだ声張れェェ!!」
「すんません隊長ォォ!!」
「オイ、いつから隊長になったんだオメーは」
「俺は生まれた時からお通ちゃんの親衛隊長だァァ!!」
『ヘェ〜そうだったのか』
「って…ギャアアアア銀さん架珠さん!?なんでこんな所に!?」
「こっちがききたいわ」
『さっさと帰ったのはここに来るためか』


私らが近づいたのははちまきにハッピ姿の新八。なんかめっさ活き活きとしてんだけど。


「てめー、こんな軟弱なもんに傾倒してやがってたとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
「僕が何しようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
『私らから見ればクソガキだよじゅーぶん』


てかキャラ変わってんじゃん。


「ちょっと、そこのアナタたち」


ん?私ら?見れば堅物そーなオバサンが。


「ライブ中にフラフラ歩かないで下さい。他のお客様の御迷惑になります」


誰この人。


「スンマセンマネージャーさん。俺が締め出しとくんで」


ああ?やってみろやコラ。

私と銀ちゃんは新八の態度にムカつき髪をわしづかみし首を絞めた。


『…あれ、あの二人知り合い?』


オッサンの方を見ると、マネージャーのオバサンと一緒に外へと向かっていた。


「オイ、架珠。新八死にかけてるぞ」


見れば顔には血の気が無く、口から泡吹いていた。そーいや私が首締めてたんだ。


『あー、ごめん新八。それより、銀ちゃんさっきのオッサンたち』
「…ちょっくら行ってみるか」


私らは死にかけの新八をほっぽりだしホールの外へと向かった。イスに座っていたオッサンのもとへと行くと、両隣に私らはそれぞれ座った。


「ガム食べる?」


ぷぅ〜と風船ガムを作りながら銀ちゃんはガムをオッさんに差し出した。


「んな、ガキみてーなもん食えるか」
『人生を楽しく生きるコツは、童心を忘れないことだよ』
「まァ、娘の晴れ舞台見るために脱獄なんざ、ガキみてーなバカじゃないとできねーか?」
「………そんなんじゃねェバカヤロー。昔、約束しちまったんだよ」



――――


ラ〜ラララ〜.


「ワハハハハ!やっぱりお前も俺の娘だな。音痴にも程があるぞ!」
「フン。今に見てな。練習してうまくなって、いつか絶対歌手になってやる!」
「お前が歌手になれるなら、キリギリスでも歌手になれるわ」
「うるさいわボケ!なるっつったらなるって言ってんだろ!!」
「面白ェじゃねーか。もしお前が歌手になれたらよォ、百万本のバラもって俺がいの一番に見に行ってやるよ」
「絶対だな」
「ああ、約束だ」


ーーーー


「覚えてるわけねーよな。十三年も前の話だ。いや、覚えてても思い出したくねーわな。人を殺めちまったヤクザな親父のことなんかよォ。俺のおかげでアイツがどれだけ苦労したかしれねーんだから。顔も見たくねーはずだ」


本当にそーかな?


「………帰るわ。バラ買ってくんのも忘れちまったし…迷惑かけたな」
「銀ちゃーん!!」


神楽?


「どした?」
「会場が大変アル。お客さんの一人が暴れ出してポドン発射」


はァ?意味分からん。


「普通にしゃべれ訳わかんねーよ!」


頬に青筋を浮かべながら神楽の頬をわしづかみにする銀ちゃん。やっぱイラッとしたんだ。わかるよその気持ち。


「いや、あの会場にですね。天人がいたらしくて、これがまた厄介なことに食恋族…興奮すると好きな相手を補食するという変態天人なんです」
『神楽、アンタ普通にしゃべれたの?』


語尾にアルがないよ?

ん?


『あ、オッさん!?』


ホールの方へと走っていってしまったオッさん。多分助けに行ったんだ。ったく…あ。


『ねェ銀ちゃん…』
「あ?」


スッとガラス張りの外を指さすと、私の意図は伝わったようで銀ちゃんは笑うと外へと向かった。

ーーーードドン.

ホールの中へと戻った私らは、デカいマスコットキャラのような天人を一撃で倒した。


「おっさん」


銀ちゃんがオッさんに投げ渡したのは真っ白な紙にまかれた三本のタンポポ。


「そんなもんしか見つからなかった。百万本には及ばねーが、後は愛情でごまかして」


ひらひらと手を振って私らはさっさとホール外へと。親子水入らずを邪魔しないように私らは扉の横で待つ。

少しして、中からオッさんが出てきた。


「よォ」
『涙のお別れはすんだ?』
「バカヤロー。お別れなんかじゃねェ。また必ず会いにくるさ……今度は胸張ってな」


涙と鼻水を流しながら言ったオッさんを見て安心した私らは、またあの警察署へと向かった。


next.

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