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汗拭きたいんですけど。
と言った意味を込めて目の前のじじいを睨めば「そうじゃったな」と言いながらタオルを渡してくれる。
(いつもタオルはふわっふわにしてくれているお母さんに感謝しなければな)
タオルで顔を拭きながらゴシゴシと顔を拭う。
あまりゴシゴシしすぎると痛くなりニキビが出来たりするが、いつもタオルがふわふわなので問題ない。
そんな様子を見ていた円堂さんが、ふと思い出したように呟く。
「サッカー、教えてやろう」
「…は?」
サッカーを教えてもらう?
こんなじじいに?
サッカーどころかこの人運動できるのか?
失礼なことを思ったせいか変な声が漏れる。
それを見て軽快に笑う円堂さんはやはり変人なのではないだろうか。
「年寄りの願いには付き合うのがお世辞ってものだ」
「いや、知らんし」
年寄りって自覚あったのかとも思うが、願いってなんだ願いって。
疑問に思ったことを伝えると、円堂さんはあの無敗のイナズマイレブンの監督だったそうだが
自分のせいで影山とか言う人の父親がサッカー界から消えることとなり、影山から恨みを買ったそうで、
決勝戦でバスに細工され、あっけなく無戦敗になったらしい。
で、自分は事故死にされただとかなんとか。
「…え、今ここにいていいの?」
「あぁ、問題ない。
誰もわしのことを円堂大介だとは思わんよ」
(…自分で言ってて悲しくないのか)
つまり影山の陰謀で自分の存在を消され、よくわからない恨みのせいでサッカーが出来ずにいるということだ。
…となると、当然事故死したと思っている円堂さんの家族だっているわけで。
ホント酷い男だな、影山零治。
円堂さんの好きなサッカー、か…。
興味が湧いてきた。
「円堂さん、サッカーに付き合ってあげてもいいですよ」
そう言うと少しの間目を見開いていたがすぐにニカッと笑って見せた円堂さんは、
まるで太陽のようなそんな明るい存在だった。
これが、小学校に上がった少し後のお話。
(よし、今から特訓!)
(は…え、マジでか)
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