レッツゴートーキョー!

「千歳〜、起きろ〜」
「おきてる・・・」
「起きてないよソレ」
「んん"・・・こうちゃん待って、」
「はいはい、ちゃんと掴まってろよ」
「ん、」

バスから降りてきた烏野メンバー達の最後尾、眠そうに目を擦りながら歩く諏訪部が、菅原のカバンを掴んでその背後をヨタヨタと歩く。菅原も分かっているかのように足並みはゆっくりとしていて、転びそうな様子に見兼ねて諏訪部の手を掴んでいた。そのやりとりには熟れ感がある。

「なあサームラさんや」
「なんですか黒尾さんや」
「あれ、なに?」

前回の宮城遠征時にはとてもしっかりした気の利く奴だと思っていた男が、ふにゃふにゃに頼りなさげな様子になっていることに、黒尾は驚きを隠せなかった。指を刺しながら隣にいた澤村に尋ねると、澤村は苦笑しながらそれに答える。

「千歳は寝起きが悪いんだよ。みんなすっかり寝てたから、早めに起こすの忘れちゃっててさ」
「へえ・・・」
「スガもテスト期間で千歳不足だったから甘やかしたいんだろうなー、たぶん」
「へえ・・・?」

諏訪部は菅原に全面的信頼を寄せているようで、引かれる手に何の疑いもなく、目蓋も先ほどより重く、ほぼ目が開いていないような状態で歩いている。菅原は諏訪部の方へ何度も視線を送り、転びそうになれば声を掛けて、確かに甘やかしているように見えた。

「なんかしっかりしたヤツだと思ってたから意外だわ」
「普段はしっかりしてるんだけどな。あと、テスト期間で気を張ってたのもあるかも」
「諏訪部もテスト厳しかったとか?」
「ああ、千歳の場合は縛りがあって  

澤村がそう言いかけた時、前方から雄叫びが上がり、その余りの勢いに思わず足が止まった。

「うおおおおお!!?」

前を見てみると、山本が膝をついて天を仰いでおり、その前には烏野の女子マネ2人が警戒しながら立っていた。

「女子が2人になっとる…!」

何やら嘆いているのをスルーして、女子2人は先へ行ってしまう。それを慌てて菅原が止めて、諏訪部を女子マネ2人に引き渡した。

「ああ清水!千歳もそっちだよな?」
「うん」
「ほーら、もう起きろー」
「うん、起きてる…」
「諏訪部さん、行きますよ!」
「うん、」

1年生らしい小さい方の女子に背を押されながら先へ行く諏訪部を見て、流石に黒尾も呆れて苦笑した。

「大丈夫なんか?あれ」
「それが不思議なことに、寝ぼけてても仕事はできるんだよ、うちの千歳さんは」

ははは、と笑い飛ばす澤村を見る限り、全く心配をしていなさそうなので、おそらく本当の事なのだろう。とてもそうは見えない、と思いながら黒尾はもう一度その頼りない背中を見た。清水に腕を引かれながら角を曲がる様子からは、手のかかる子どものようにしか見えなかった。



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