想いはすれ違い
勢いよく振り返った2人の先で、雛香は大きく目を見開きこちらを見つめていた。
未だ雲雀にくっつくかのような体勢の己に気付き、雛乃は慌てて距離を取る。誤解を招いてしまいかねない。
いや、もう既に余計な誤解を招いたりしてはいないだろうか。
慌てて雛乃は口を開き、雛香のもとへと1歩踏み出す。
「……雛香、なっ、なんで、」
「……どういう、ことだよ」
低く掠れた声音。
雛乃は思わず足を止めた。息を呑む。
「……雛香……?」
身じろぎもせず佇む雛香は、見たことのない表情でこちらを見ていた。
混乱。疑惑。動揺。不信。そして、確かな、
「……意味、わかんねえよ……」
怒り。
言葉を呑み込んだ。
理屈でもなんでもなく、本能的に雛乃は察した。
今の雛香に、自分の言葉は届かない。
雛香はその黒い瞳に鋭い光をたたえ、睨むかのようにただ見据えていた。
「……俺を殺した、って、どういうことだよ……」
真っ直ぐに、貫くように。
追い詰めるかのように。
「――雲雀!」
自分の傍らに立つ、雲雀へと。