君を咬み殺す3 | ナノ




想いはすれ違い
 勢いよく振り返った2人の先で、雛香は大きく目を見開きこちらを見つめていた。
 未だ雲雀にくっつくかのような体勢の己に気付き、雛乃は慌てて距離を取る。誤解を招いてしまいかねない。
 いや、もう既に余計な誤解を招いたりしてはいないだろうか。
 慌てて雛乃は口を開き、雛香のもとへと1歩踏み出す。

「……雛香、なっ、なんで、」
「……どういう、ことだよ」

 低く掠れた声音。
 雛乃は思わず足を止めた。息を呑む。

「……雛香……?」

 身じろぎもせず佇む雛香は、見たことのない表情でこちらを見ていた。
 混乱。疑惑。動揺。不信。そして、確かな、


「……意味、わかんねえよ……」


 怒り。

 言葉を呑み込んだ。
 理屈でもなんでもなく、本能的に雛乃は察した。

 今の雛香に、自分の言葉は届かない。

 雛香はその黒い瞳に鋭い光をたたえ、睨むかのようにただ見据えていた。

「……俺を殺した、って、どういうことだよ……」

 真っ直ぐに、貫くように。
 追い詰めるかのように。


「――雲雀!」


 自分の傍らに立つ、雲雀へと。





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