君を咬み殺す3 | ナノ




語れない、語らないのは
「、雛香」
「どういうことだよ……雲雀」

 雛乃が息を呑み名を呼ぶ声が聞こえたが、今の雛香の目に映るのは、ただ1人だけだった。
 黒いスーツに身を包む、切れ長の黒い瞳の持ち主、ただその人物のみ。

「……どういうことだよ……俺は、雛乃を庇って死んだんじゃなかったのか」
「雛香、それはっ、」
「なんで嘘をついたんだよ、雲雀ッ!」

 鼓膜を打つ鋭い声が、薄暗い廊下に響き渡る。

「雛香、それには理由が、」
「宮野雛乃、君は黙ってて」

 焦った表情で口を開いた雛乃の前、無表情に遮り一歩踏み出す雲雀の姿。

「雲雀……」
 雲雀は、口を開かない。
 あれほど数多の感情を浮かべてみせたその黒い瞳から、今、何ひとつ読み取ることができない。

「……答えろよ、雲雀ッ!」


 ダンッ!!

 鈍い衝撃が、壁を大きく震わせた。





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