とある未来で
「……雛香チャン、なんで、」
「……怪我は、ない、か?」
「無いよッ、どうして庇ったりなんか、」
「なら、良かっ、た……」
腕の中、焦点を失ってゆく黒い瞳。
彼の小柄な身体は、胸の中にすっぽり収まるほど小さく、そして細く脆く。
「……なんで、そんなことしたの、大バカッ……」
「けほけほっ、く、は……」
「喋っちゃダメだよ、傷口が、」
「白蘭」
うっすら開いた瞼の下、こちらを見据える黒い瞳は、
どこまでもまっすぐで強く、
自分が愛した、変わりない彼の瞳で。
「……どうして、なんて、けほけほっ、」
「!やめ、」
「決まってるだろ……」
頬を何かが滑り落ちていく。
滲み出し見えなくなる視界で、彼の指が頬に触れるのを感じた。
「……あいしてる、から……」
どこか遠い、とある別の世界の未来で。
最愛の白髪の腕の中、
血に染まった少年が、静かに目を閉ざした。