君を咬み殺す3 | ナノ




とある未来で
「……雛香、なぜ、」
「……怪我は、ない、か?」
「馬鹿ッ、どうして、」
「なら、良かっ、た……」

 腕の中、焦点を失ってゆく黒い瞳。
 彼の小柄な身体は、胸の中にすっぽり収まるほど小さく、そして細く脆く。

「……ふざけるな、なんで僕を庇ったりなんか、……」
「げほげほっ、く、は……」
「喋るな、傷口が」
「雲雀」

 うっすら開いた瞼の下、こちらを見据える黒い瞳は、
 どこまでもまっすぐで強く、


 自分が愛した、変わりない彼の瞳だった。


「……どうして、なんて、けほけほっ、」
「!やめ、」
「決まってるだろ、ひばり……」

 頬を何かが滑り落ちていく。
 滲み出し見えなくなる視界で、彼の指が頬に触れるのを感じた。
 


「……あいしてる、から……」



 どこか遠い、とある世界の未来で。

 最愛の黒髪の腕の中、
 血に染まった青年が、静かに目を閉ざした。





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