君を咬み殺す3 | ナノ




最悪な光景とともに
「京子ちゃん……!」
「ツナ君!!」
「無事で良かった!」
「ごめんなさい……私……」
「えっ!あ、き、気にしないで!」

 10年後の黒川花に無事かくまわれていた京子に、ツナは安堵の息を吐き、笑顔を見せた。

「ツナって本当、奥手だよね」
「この状況でお前はよくのんきにそういうことが言えるな、雛乃……沢田、急ぐぞ!」
「え!あ、うん!ごめん黒川……さん(でいいのか……?)、もう少し京子ちゃんをかくまってくれないかな?」
 頭を下げるツナに、花は目をぱちぱちさせながら頷く。
「そりゃ、いいけど……」
「ありがと!じゃああとでねっ」

 パタン、と慌ただしく閉まったドアを見つめ、京子と花はぽかんとしたまま立ち尽くす。

「い、忙しそうね……しかも沢田も縮んでるし……」
「雛乃君は、違うみたいだけど……」
 不安げな顔をする京子が思いを馳せる先、走り去った3人が向かうのは、

 並盛神社、その場所。


***




「……さあて、ボンゴレ10代目はいつ生き返ったのかな?」

 山本の一撃を予備の炎で防いだγが、立ち上がる。

「お前らの若さにも驚いたが、それよりもボンゴレ10代目だな……生きてるとはただごとじゃあない」

(まずい……!!)
 平然と佇むγの姿に、獄寺の背中を冷たい汗が流れ落ちた。

(……俺1人で、コイツを……!)

 脳内で即座に次の策を思考する。山本が倒れた今、状況は非常に悪い。
 だが、必死で策を巡らす獄寺の脳は、


「――全く、このままじゃあボンゴレ門外顧問も生きてる、なんて言いかねねーな」


 その一言を聞いた瞬間、停止した。

「……何?」
「あー、次期、か。現門外顧問では無かったか」

 何とも思ってなさそうに、γはつらつらと言葉を並べる。
 ひどく冷然と淡々と、そしてどうでもよさそうに。

「そっちの方がよく知ってんじゃねえか?仲間を庇って死んだとかだったな」

 凍りつく獄寺の脳裏に、
 まさか、そう思いながらも浮かび上がる、

 1人の少年。

「今は双子の弟が次期顧問に収まったらしいな……たしか、そう……宮野雛香、だったか?」


 ――悲痛に歪められた、雛乃の顔。

『……宮野雛香は、死んだ』



「……ろしたのか」
「ん?」
「殺したのか……雛香を!!」


 聞いた時は、まさかと思った。
 悪い冗談だ、間違いだ。でなければ、夢か。


『いいぜ、ここでやり合うか?獄寺』


 挑発的に唇を緩めて笑う、あのまっすぐな黒目が、二度と見られないだなんて。
 
 そんな、未来が待っているなどとは。


「……て、」
「ん?」
「てめぇら、全員果たしてやる!!!」

 絶叫した獄寺に応えるように、赤色の炎〈フレイム・アロー〉が大きく口を開ける。


「許さねぇ!!!」


 放たれた巨大な炎の塊に、しかしγは微動だにせず――。


***




「……ここか?」
 ガサリと木の根元をかき分け、雛香はひょいと顔を覗き込む。
「うわっ、火薬くさ……獄寺がダイナマイトぶっ放しまくったみたいな……」
 顔をしかめながらぶつぶつと呟いたところで、

 呼吸が止まった。


「……は、」


 眼下、周囲を木々が囲む中、
 僅かにひらけた、その場所で。


「そろそろ吐かねーと、とりかえしがつかねぇぞ」
 地に伏せたままぴくりともしない山本、掴みあげられる獄寺。
 そのどちらも、

 尋常でない量の血に染まっていて。


「……なるほど、そうかい」


 獄寺の首を乱暴に放し、
 見知らぬ男は、非情にも武器を振り下ろした。





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