君を咬み殺す3 | ナノ




どん底から目覚める世界
『もちろんリボーンも……いない』



 衝撃的すぎた。

 いきなり10年後にぶっ飛んで、しかも自分は死んでいて、いきなり見たこともない人に襲われて、
 さらには。

(……リボーンがいない、なんて……そんなこと)

 あるわけない、と否定したいのにツナの脳内が納得してくれない。
 自分の中の何かが、はっきりと告げていたからだ。

 嘘じゃない、と。


***




「……ボンゴレ本部は2日前、壊滅状態に陥った」
 未だ状況を理解できていないツナ達に、焚き火を囲みながら語り出す、門外顧問下の人間だというラル・ミルチ。
 この人、右頬痛そうだけど大丈夫なのかな、なんて考えていたツナは、告げられた事実に顔をぶん殴られた気がした。

「……え、ええっ?!」
「だまされないでください10代目!あの大ボンゴレが壊滅なんて……!」
「本当だ」

 動揺に叫ぶ獄寺達を前に、あくまで淡々と告げる彼女。
 その表情はどこまでも無であり、何も読み取れない。

「この時代にはそれができるファミリーがいる……ミルフィオーレファミリー、ボスの名は白蘭」
「!!」

 10年後の獄寺も口にしていた人物に、ツナは大きく目を見開いた。

「この時代、戦局を左右するのはリングと匣(ボックス)だ。奴らはリングと匣を略奪することにより力をつけ、同じ目的でボンゴレにも急襲した」
「ボンゴレリングが狙いだってのか?!」
「……いや、重要なリングはそれだけではない。沈黙の掟(オメルタ)に守られてきたマフィアのリングには、人知を超えた力が宿っていたんだ。例えばアレを、」
 見ろ、と頭上に浮かぶ気球へ目をやったラル・ミルチは、

 ぴたり、動きを止めた。

「……っ!」
 途端、ばっと砂をかけ火を消すラル・ミルチ。
 突然の行動に、獄寺が不審な声をあげた。
「何しやがんだ!」
「敵だ!!」
 鼓膜を鋭く打つ声音に、2人はぎょっと凍りつく。

「死にたくなかったら……俺の言うことを聞いていろ」


***




 ツナ達の前に現れたのは、ヴァリアー戦で見たよりひと回り巨体のストゥラオ・モスカ。
唖然とするツナと獄寺の前、低い唸り声とともに背を向ける相手。
 しかし次の瞬間、
 モスカはぐるりと首を回し、再びこちらにピタリと標準を合わせた。

「なぜだ?!お前たち、他にリングを持っていないだろうな?!」
「あ、これ……!」

 思い出したツナが慌てて取り出したのは、未来へ来る前にランチアから授かったリング。
「!!馬鹿、なぜ早く……!」
 目を大きく開いたラル・ミルチが手を伸ばすが、それより早く近づいてくる巨体。くっ、と顔を歪め、彼女は素早く立ち上がった。
 一瞬にして思考を切り替え、歯噛みしながらも己の左腕をかまえる。
「アジトまであとわずかというところで……!」
「そんな……」

 ツナ達が息を呑んだ、
 その時。



「鮫衝撃〈アタッコ・ディ・スクアーロ〉!」
「オルトロスの閃光〈ランポ・ディ・ルーチェ・オルトロ〉!」



 突如地が震え、目もくらむような眩い光が放たれた。



「これは……」
「えっ……?!」

 とっさに顔を覆った手の平をどければ、
 3人の前に現れたのは。


「助っ人とーじょーっ」
「なんとかセーフ、ってとこかな?」


 覚えのある、のどかな声音と暖かな笑み。


「……や、山本?!と…………雛乃?!」





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