どん底から目覚める世界
『もちろんリボーンも……いない』
衝撃的すぎた。
いきなり10年後にぶっ飛んで、しかも自分は死んでいて、いきなり見たこともない人に襲われて、
さらには。
(……リボーンがいない、なんて……そんなこと)
あるわけない、と否定したいのにツナの脳内が納得してくれない。
自分の中の何かが、はっきりと告げていたからだ。
嘘じゃない、と。
***
「……ボンゴレ本部は2日前、壊滅状態に陥った」
未だ状況を理解できていないツナ達に、焚き火を囲みながら語り出す、門外顧問下の人間だというラル・ミルチ。
この人、右頬痛そうだけど大丈夫なのかな、なんて考えていたツナは、告げられた事実に顔をぶん殴られた気がした。
「……え、ええっ?!」
「だまされないでください10代目!あの大ボンゴレが壊滅なんて……!」
「本当だ」
動揺に叫ぶ獄寺達を前に、あくまで淡々と告げる彼女。
その表情はどこまでも無であり、何も読み取れない。
「この時代にはそれができるファミリーがいる……ミルフィオーレファミリー、ボスの名は白蘭」
「!!」
10年後の獄寺も口にしていた人物に、ツナは大きく目を見開いた。
「この時代、戦局を左右するのはリングと匣(ボックス)だ。奴らはリングと匣を略奪することにより力をつけ、同じ目的でボンゴレにも急襲した」
「ボンゴレリングが狙いだってのか?!」
「……いや、重要なリングはそれだけではない。沈黙の掟(オメルタ)に守られてきたマフィアのリングには、人知を超えた力が宿っていたんだ。例えばアレを、」
見ろ、と頭上に浮かぶ気球へ目をやったラル・ミルチは、
ぴたり、動きを止めた。
「……っ!」
途端、ばっと砂をかけ火を消すラル・ミルチ。
突然の行動に、獄寺が不審な声をあげた。
「何しやがんだ!」
「敵だ!!」
鼓膜を鋭く打つ声音に、2人はぎょっと凍りつく。
「死にたくなかったら……俺の言うことを聞いていろ」
***
ツナ達の前に現れたのは、ヴァリアー戦で見たよりひと回り巨体のストゥラオ・モスカ。
唖然とするツナと獄寺の前、低い唸り声とともに背を向ける相手。
しかし次の瞬間、
モスカはぐるりと首を回し、再びこちらにピタリと標準を合わせた。
「なぜだ?!お前たち、他にリングを持っていないだろうな?!」
「あ、これ……!」
思い出したツナが慌てて取り出したのは、未来へ来る前にランチアから授かったリング。
「!!馬鹿、なぜ早く……!」
目を大きく開いたラル・ミルチが手を伸ばすが、それより早く近づいてくる巨体。くっ、と顔を歪め、彼女は素早く立ち上がった。
一瞬にして思考を切り替え、歯噛みしながらも己の左腕をかまえる。
「アジトまであとわずかというところで……!」
「そんな……」
ツナ達が息を呑んだ、
その時。
「鮫衝撃〈アタッコ・ディ・スクアーロ〉!」
「オルトロスの閃光〈ランポ・ディ・ルーチェ・オルトロ〉!」
突如地が震え、目もくらむような眩い光が放たれた。
「これは……」
「えっ……?!」
とっさに顔を覆った手の平をどければ、
3人の前に現れたのは。
「助っ人とーじょーっ」
「なんとかセーフ、ってとこかな?」
覚えのある、のどかな声音と暖かな笑み。
「……や、山本?!と…………雛乃?!」