変わらない2人に救われて
唸るストゥラオ・モスカを止めたのは、やけに見覚えのある2人組だった。
「……山本!雛乃!」
「なっ、ま、まさか……!」
びっくりまなこで2人を見つめるツナに、あれ、と山本も目を開いた。
「門外顧問とこの使者を迎えに来たらおまえらまでって……悪い冗談じゃないよな?妖怪?幻?なんか縮んでるし……あ、幽霊?」
(この人、やっぱり10年後の山本だ……)
きょとん、と首をかしげどこまでも緊張感のないこの態度は、誰がどう見ても山本である。
「山本、よく見て。彼ら足ついてるし、僕にも見えてるから」
少々呆れたように割り込んだ、明るい笑みを浮かべた彼は。
「……雛乃?!」
「うん、そうだよ。10年前のツナ」
驚愕にぽかん、と口を開けるツナに、一方の雛乃はにっこりと微笑んだ。
(……え、な、なんか)
全く動揺をしていない様子もそうだが、
随分高くなった目線に、引き締まった顔つき、鋭さを増した黒い瞳。
「あ、あの雛乃が……めっちゃ大人っぽい……」
「ありがとうツナ、でも『あの』ってなにあのって」
途端、むむっと口を尖らせツナの頬を引っぱる雛乃。
「宮野てめー、10代目に何て事を!」
「あ、獄寺なんかちっちゃい!」
「果たすぞ!!」
「はいはい、ストップなー」
すっかりなごんだ空気に置いていかれたラル・ミルチがむすっとしているのを横目に、山本が割り込んだ。
苦笑しながら、雛乃の頭をぽんぽんと叩く。
「ほら、そんな場合じゃねーだろ雛乃」
「むー……」
(……な、なんか2人とも、仲良い?)
元々仲は良かったが、710年経ってさらに距離が縮まったのだろうか。
じっ、とその様子を見つめていると、しびれを切らしたらしいラル・ミルチが前に進み出る。
「おい、アジトまで早く行かなければ。モスカは待ってくれないぞ」
「大丈夫、僕のオストロスの光で完全に混乱させてるから」
いつまでも幻覚相手に分析してればいいよ、とにんまり笑う雛乃。
「まーでも、ここでのんびりするよりアジト行った方がいいだろうな」
目の前を流れていく大人組の会話に、ツナと獄寺は顔を見合わせた。
……そういえば、雛乃の手にはワイヤーが無い。
さっきの山本の技といい雛乃の発した光といい、一体何がどうなっているのか。
「まー、とりあえずアジト案内すっぜ」
にっ、と歯を見せ笑った山本が歩き出す。
「待て、方角が」
「あ、ごめん、ラルが知ってるアジトの在処は偽の情報なんだ」
「何?」
「ちゃんと目あけとけよ、ツナ、獄寺」
一瞬足を止め振り返った山本が、目を光らせる。
「すっげーの、見せてやるから」