よぎる思惑
ダチュラの花が咲き乱れている。
「……いまだ信じられん」
「だが、アフェンドラ隊からの報告書によれば信憑性は高い……」
疑惑と不信に揺れる机上の周囲、何事も知らぬかのように咲き乱れている。
「しかし……」
「いささか、」
「突飛すぎやしませんかねえ……」
困惑に満ちた目が集う先、白ずくめの男は、ただニコリと笑みを浮かべた。
「過去のボンゴレファミリーが、この時代にタイムトラベルなど……」
白蘭は、ただ笑みを返す。
手元の機器をいじり、そこでやっと口を開いた。
***
「……てわけで、納得してもらえたかな?」
ひと通りの説明を果たした白蘭は、自身の管轄下である17部隊長全てを見渡しニッコリ笑う。
「あの、辺鄙のボウィーノの10年バズーカなどとは……」
「およそ信じられぬ…」
「だろうね。でも既成事実を示したら、すぐに教えようと思ってたんだ」
笑んだまま、白蘭は軽く身を乗り出す。
広く長い机面のはるか向こうに座る、小さな少女に。
「本当だよ?ユニ」
にこり、口元だけで浮かべられた笑みを、少女は唇を引き結んだままただ無表情で見返した。
「……しかし、なぜわざわざまたボンゴレを……?」
「1度彼らを消したぐらいじゃ物足りませんか?ボス……」
《まるでわかってないねえ》
それでもなお不穏にざわめく場に、突如響く、嘲りに満ちた声。
「なに?!」
《この計画の狙いは幼いボンゴレファミリーなどではなく……奴らがしょってくるネギの方でしょう》
回線を通して響いた声音に、白蘭は嬉しそうに微笑んだ。
《リング、リング、ボンゴレリーング》
「ぼっ、」「ボンゴレリング?!」
一気に騒然となる周囲に、白蘭は手元のスイッチを入れた。
「……さすがグロ君。わかってくれたみたいだね」
息を呑む一同の前、ゆっくりと降り立つは1つの鏡板。
そこに嵌まるは5つのおしゃぶり、そしてリングのためのいくつもの空白、
完璧な円をなす3つの輪。
「僕が欲しいのは、究極権力の鍵……トゥリニセッテだよ」
***
まあ、もうひとつあるんだけどね。
騒ぎ立つ眼前の部下たちを眺め、白蘭はさらに笑みを深める。
『……白蘭』
風になびく、黒い前髪。
振り返り名を呼ぶ、同じ色の瞳。
僕は、欲しいものは全て手に入れる。
だからね、雛香ちゃん。
懐から出したマシュマロを口に入れ、白蘭は内心で呟いた。
もう少しだけ、待っていて。