■ 16 SIDE▼生瀬 真啓
SIDE▼生瀬 真啓
暫く撫でて段々と瞼を閉じていく
愛澄をじっと見つめてた
祖先から受け継いだ
碧い眼は今は俺を写すことなく
静かに閉じられてる
あぁ、綺麗だ。と思う
腰に回してる腕に力を入れて
もっと愛澄に密着した
「…なんか女を抱いてるみてぇだな」
つい本音が口から漏れた
風呂の時から思ってたが
愛澄は細い。細すぎる。
白くて細い身体
クオーターという事もあり人目を引く顔立ち
そんな愛澄を誰かが強姦したのだと考えるとイライラする。
愛澄の額に唇を寄せる
「やっと手に届く所まできたのか」
愛澄には
おじさんが俺に頼んだと言ったが
実際のところは逆だ
寧ろ、愛澄の人間不信を一緒に克服してくれる相手を探していたおじさんに自ら申し出た。
愛澄は忘れてると思う
俺達は今日初めて会ったわけじゃない。
中等部1年の時にクラスは違えど話したことがある
いや、訂正すると忘れてるというよりは俺が違いすぎて分からない、の方が正しいか。名前も俺が一方的に知ってて俺の名前は教えてないから
あの頃の俺は軟弱で愛澄よりも背が低くくて愛澄に助けて貰ったことも数回かあった。
そんな愛澄に俺は一種の憧れすら抱いたもんだ。
中3の終わり頃、俺は背も伸びて口も悪く喧嘩っ早くなっていた。
愛澄があの事件に巻き込まれ不登校になったという事を知った途端、沸々と怒りがこみ上げて、そいつを殴り殺したくなったのを覚えてる
そんな彼。愛澄と久々に会った今日。
あの頃と比べて性格が全く異なっていた。
俺が知ってる愛澄は元気で弱い者いじめを見過ごせなくて、クラスの中心的存在だった。
そんな彼が今では
内気で臆病になってた。
「…やっぱ許さねえ」
ここまで愛澄を変えさせた野郎が許せない
沈んでいた感情が再び熱を上げた
「………ん」
そんな時に愛澄から吐息が漏れた
「…あずみ」
俺の腕の中でもぞもぞと動いてる姿は可愛らしい
自らの胸に頬をすり寄せてくるのを見て
さっきまでの苛立ちが嘘のようにすっと胸から消えた
[
prev /
next ]
back