▽ 19
お母さんの横で料理の手伝いをしていると、テツヤが帰ってきた。
「テツヤーお帰り」
玄関に向けて、叫ぶと小さく「ただいま」と聞こえた。
私はそれに満足して机にお皿を並べた。
暫くすれば父さんも帰ってきて、テツヤも手伝いを始めた。
「あ、そうでした」
テツヤの言葉に振り返れば、少し頬を緩めた我が兄。
テツヤはそのままの表情で私に言った。
「一軍マネージャーおめでとうございます」
私は嬉しくてテツヤに体当たりした。
「僕も頑張ります。だから、応援しててくださいね」
ポンポンと頭を撫でる手は優しくて私は擦り寄りながら頷いた。
「当たり前だよ。だって、テツヤは凄いもん!」
「ありがとうございます」
クスクスと笑う私たち兄妹。
すると、上から降りてきた父さんが私を見て笑った。
「ははっ、テツヤも美桜も仲が良いな!」
遂には、残りの料理を運んできた母さんも会話に混ざる。
「あら、当たり前でしょ。この子たちお互いにシスコンブラコンですし。ねぇ、二人共?」
ニコニコと此方に笑顔を向ける母さん、あれだ。
私は似てないのは当たり前として、テツヤと母さんは間逆だ。
特に表情が。
……まあ、時々の黒さは完璧に似ているが。
そして、父はとても寛大で優しい絵に書くいい人。
どうしてこうなったのか。
二人が幸せならどうでもいいんですけどね。
「あ、ご飯食べるわよ〜」
「分かりました。って母さん言い出しっぺが"いただきます"も無しに先に食べないでください」
「あら、良いでしょ?私は"食べるわよ"がいただきますなんですから」
「ははっ、テツヤ良いじゃん。私たちも食べよう?」
慌ててフォローに走った私は悪くない。
テツヤは大きく母に対して、溜め息を吐くと椅子の背中に手を置く。
「……仕方ないですね」
私もテツヤも父さんも座れば目の前の父さんが手を合わせた。
「じゃあ……いただきます!」
「「いただきます」」
父さんの掛け声と共に私たちもその言葉を言って、料理を食べ始めたのだった。
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