Sunny Day
軽快なメロディがポケモンセンターのロビーに響く。
「お待ち遠様。お預かりしたポケモンは、すっかり元気になりましたよ!」
「タブンネ〜。」
ニッコリと、見る者の心のを安らげる笑顔と共にモンスターボールの乗ったトレイを差し出すジョーイさんと、
同じく笑顔のタブンネにお礼を述べて、メイはカウンターからそそくさと離れる。
入り口付近の、なるべく人の邪魔にならないよう隅側に寄り、
返ってきたモンスターボールのスイッチ部分を床に向ければ、誘われるままに中からポケモンが飛び出した。
「エアーッ。」
「エアームド!わああ、ごめんね〜!無事でよかった〜!」
「エアァ!」
あやうく酸化しかけたエアームドの錆びかけの身体は、すっかり元の美しさを取り戻しており、メイは心底安心した。
まるで長年の再会のように、ひし……!と抱き合うふたりにフタチマルの呆れを乗せたクールな眼差しが向けられる。
まったく、本当に無事で何よりだとフタチマルも安堵した。
「うーん、でも困ったわねー……。海がダメなら、他に何がいいかしらー。」
「エアァ。」
「フチ……。」
感動の再会から一転、抱き合った体勢はそのままにメイは疑問符を頭に浮かべて困り顔をしてみせる。
そもそもメイたちが海へ行こうとしたのが、エアームドがきっかけだったのだ。
この暑い夏の日。
気温は朝から急上昇のカーブを描いており、外を歩けば いつのまにか茹でられたオクタンのような状態にさせられるほど。
そんな炎天下の下、エアームドの自慢のメタルボディが目玉焼きが作れそうなほど熱を帯びてしまっていたことにメイが悲鳴を上げたのは記憶に新しい。
それで、夏といえば海――というわけで、サザナミタウンの美しいビーチまでやってきたのだが、この結果である。
海がダメなら、他に夏らしい遊び……。
みんなでハッピーに楽しめる何か……あ。
「そうだ、花火やろう!楽しいよ!」
「エアー!」
メイの画期的 提案(本人談)にエアームドは翼を広げてはしゃぎ声を上げた。
どうやら乗り気らしい、満面に浮かぶ笑みにメイも早速行動に移すべく両手に握り拳を作った。
その横で、フタチマルが必死に首を横に振り、メイのキュロットを両手で引っ張る。
そんな風にわちゃわちゃとしていると「あれえ?」という間延びしたソプラノがメイたちの耳に届いた。
「ねえねえ!あなた、メイ?」
振り返れば、白いリボンのアクセントが可愛らしい緑色の大きなボウシを被った、メガネの女性。
その数歩後ろには、清涼感のある白いシャツに赤いネクタイをきっちりと締めた、知的な男性。
メイは、先に見つけた女性に向かって即座に駆け出した。