Sunny Day
浅瀬から少し離れたところでフタチマルと泳いでいたメイは、
イーブイとゾロアのちっちゃいものコンビの追いかけっこを見つけ、フタチマルに「見てみて」と腕を伸ばして指し示した。
「楽しそうだね、イーブイとゾロア!カワイイ!ハッピー!」
「フタチ。」
わたしも混ざりに行こうかなーと呟いたところで、メイの頭上に影が差し掛かる。
「!エアームド。」
「ムドーッ。」
翼を広げ、メイとフタチマルの頭上をぐるぐると旋回するエアームドが細長いくちばしからギャア、と金切り声を吐き出した。
先程まで岩陰で居眠りをしていた彼女に「おはよう」と声を掛けたメイが、同時にぱしゃんと水飛沫を連れて片腕を上げる。
「エアームドも一緒に泳ごうよー!」
「フタ、フタチ、」
「エアァ〜?」
その発言に、フタチマルが即座にメイへ振り返った。
エアームドは旋回を止め、メイの顔がよく見えるよう彼女の目の前まで下降し、きょとんと首を傾ぐ。
「水の中、冷たくて気持ちいいのよー。それにわたし、泳ぐの好きなの!
とってもハッピーな気持ちになれるのよー。」
「……!!」
ガーーン。音にするならそんな様子で、エアームドが硬直する。
くちばしをあんぐりと開け放ち、しばしの間 沈黙をしていたが、次第に固まっていた身体はプルプルと震えが走り出した。
震えに合わせてゆっくりと下ろされた首。
――が、突然 勢いよく持ち上がるや否や、
エアームドの開け放たれていたくちばしから大音量の金切り声がメイに向かって発せられた。
「エアァ〜〜ッ!!」
「ひゃあああ、なになになんなの〜〜!?」
怒りの形相を浮かべて翼でばっしばっしと叩かれ出したメイが間の抜けた悲鳴を上げる。
何事かとイーブイたちがこちらを凝視しているのを見つけたフタチマルが、
エアームドに落ち着いてと声を掛けるも、怒りん坊な彼女は一切聞く耳を持ってくれない。
何に対して急に怒りを見せたのか。
考える間も与えずにメイに攻撃を仕掛けるエアームド。
ばしゃばしゃ、わちゃわちゃとしながらメイは必死に提案した。
「エ、エアームドも海に入って泳いでみたらわかるよ!ほらほら、おいでー。ねっ?ねっ?」
「フタ、フタチ、」
またしてもフタチマルが即座にメイの提案を首を振って否定しにかかるも、
エアームドの首に腕を回したメイが彼女を海の中に引きずり込む方がはやかった。
少々強引だったが、エアームドの攻撃から逃れるためには致し方なかったのだ。
少しの間、海の中に沈んでいたふたりだが、やがてメイがエアームドを引き連れて海面に顔を出す。
「ぷはっ……!ふう……。ねー、楽しいでしょー?海の中ってキラキラしていて……、」
「エアァー……。」
「あれ?エアームド?」
いきなり水の中に入ってびっくりしちゃったかな?
ぺたぺたとエアームドの身体を触りながらクタクタの彼女の顔を覗き込むメイがふと見つけたのは、
エアームドの自慢のメタルボディの一部に浮かぶシミのようなもの。
「あれ、エアームドひょっとして錆びて……、…………あ。
…………ああああ、エアームド〜〜!」
「フタ……。」
だからやめろと言ったのに……フタチマルのため息は海面に溶けて消えてしまった。