Sunny Day
「ベルさん!こんにちはー!」
「ふわあっ。……うふふ、やっぱりメイだ。こんにちはあ。」
こんなところで偶然会えるなんて、ハッピー!と半ば飛びつく勢いで女性――ベルに抱き着いたメイを、
よろけつつも ふんわりと包み込むように抱き留めたベルは微笑みを浮かべてアイサツを返す。
「こんにちは、メイ。」
「チェレンさんもこんにちは!」
ベルの数歩後ろから彼女の隣まで前に出てきた男性――チェレンもメイへアイサツを口にした。
ベルに抱き着いたままのメイが元気よく「こんにちは」を口にした、その足元でフタチマルとエアームドも2人に向かってそれぞれに鳴き声を発する。
「フタチマルたちもこんにちはあ。元気そうだねえ。」
「はい!ベルさんたち、何でサザナミタウンに?」
「この辺りの水道に生息するポケモンの分布を調べにきたんだよ。」
フタチマルたちへのアイサツのためにメイを放してしゃがみ込んだベルがそれぞれに手を伸ばし、頭や頬を撫でる。
その優しい手つきと、伝わってくる穏やかな気持ちに心地良さげにフタチマルとエアームドは瞳を閉じた。
さすがベルさん!と感動しながら、チェレンとベルの2人が一緒になってサザナミタウンにいる理由を尋ねれば、答えを返したのはチェレンの方だった。
「あたしがサザナミまで行こうとしたら、チェレンと偶然会ってねえ。
調査のお手伝いするよーって言ってくれたの。」
「ぼくも、この2年の間の生態系の変化は気になっていたからね。
今、トレーナーズスクールは夏休み期間で、ぼくも暇ができたから同行させてもらってるんだよ。」
「なるほどー。」
てっきりデートかと思っちゃった。と口に出したメイに、目に見えてチェレンは焦り出す。
いつもクールで落ち着いているチェレンがいとも簡単にその姿勢を崩した姿から、
彼の初心な性格やベルを意識しているという事実は丸わかりで……。
メイは、察しの良いフタチマルと、根は非常に乙女思考のエアームドと一緒に微笑ましいものを見る眼差しを彼に向けた。
対するベルは「うふふ、ちがうよお」と、相変わらずのんびりとしながらやんわり否定するものだから、途端にチェレンが胸を押さえて顔を背ける。
地味にショックだったらしい。
悪いことをしただろうか。
「メイたちは何をしていたの?」
「みんなでサザナミタウンの海に泳ぎにきたんです!それで、今度は花火をやろうと思って……。」
「エアー!」
「うわあ、楽しそう!いいねえ、花火!」
メイの発言とエアームドの威勢の良い相槌にベルは手を叩いて無邪気な笑みを広げる。
「昔はあたしたちもよく花火をやってたよねえ。」
「そうだね。毎年きみのお父さんに散々止められたのもよく覚えているよ……。」
落ち着きを取り戻したチェレンが、どこか遠い眼差しで苦笑を浮かべた。
昔を懐かしんでほっこりするベルとは裏腹な表情には疲れが滲んでおり、どうやら楽しい思い出ばかりではないらしい。