02


 



地下の迷路を巡って乱太郎が教室へ帰ってくると、11人は教科の授業を受けるように座る。その間もにぎやかに会話は続き、全員が久々の再会を楽しんでいるようであった。
「全員揃ったな」
暫しの会話の後、庄左ヱ門が言う。学級委員長の言葉に全員が会話をやめて言葉の主を見た。
「僕達も無事今年度から六年生だ。それで、だいぶ授業が変わるらしくてさ」
「進級試験しんどかったよな」
「うんうん。それぞれで試験内容違ったもんね」
団蔵と三治郎の言葉に各々が頷く。苦い顔の者もいれば、身震いをする者と反応はそれぞれだが、きつかったことは皆一様のようだ。
「そうだね。でもまあ全員進級できたわけだし、結果良ければ全て良し、だよ」
話が脱線しがちなのは変わっていないな、と庄左ヱ門は苦笑した。そして続けて言う。
「それで、早速先生方からの指示」
これ以上話を脱線させないためにも、伝えるべきことは率直に言ったほうがいいだろう。この組は。
「手段は問わない。城一つ、落としてこい」
それを先程、事実上は組の担任である山田伝蔵、土井半助の二人に言われた時、唖然として、聞き直してしまったが。
「え?そ、それって…」
クラスメイト達が同じような反応をしたことに心の中で笑って、庄左ヱ門は肩を竦める。
「そのままだよ。城一つ…言ってしまえば、再起不能にしてこいってことだね」
「指示ってそれだけなの?」
少し不安そうに乱太郎が言う。その言葉に頷いて見せると、それぞれ表情が変わるのが解った。
「落とす城はどこでもいいのか?」
金吾が言う。表情は固く、利き腕を刀にそえている。スイッチが入りつつある時の金吾の癖である。
「だとすれば…そこから自分達でやらなくちゃってことか」
小さく笑って言う虎若に、団蔵が答えるようににやりと笑った。
「面白いじゃん」
「勇ましいじゃねーか団蔵。去年の最後の実習みたいになんなよ?」
悪戯っぽく言うきり丸の言葉に何やら思い出したのか、団蔵の表情が苦いものになる。
「でも、それならちょっと準備をしなくちゃだね〜」
にこにこ笑って喜三太が言う。その手は壺を撫でている。
「そうだね。作戦が決まり次第すぐに動けるようにしておかないと」
「好き勝手やって良いんだったら別だけどね?」
三治郎、兵太夫が視線を合わせて笑う。そんな二人を見て数名が苦笑いをした。
「ご飯もしっかり食べておかないとね。力が出なくなっちゃう」
「それはしんべヱだけだよ…しかし、こんなのは初めてだね。細かい指示が何もないなんて」
笑顔のしんべヱにツッコミを入れつつ乱太郎が言う。その表情はどこか不安げだ。
「…庄左ヱ門。どうする?」
伊助の言葉に庄左ヱ門は頷いて。
「まあ、だいたいは考えてあるんだ…ひとまずはいつもの流れでいこうと思う」
さすが、ときり丸が呟くのが聞こえた。それに小さく笑って答えると、言葉を続ける。
「まずは城を決めなくちゃいけないね。先生は特に期間指定はしてこなかったけど、それはどの城を落とすかによって変わるからだと思うんだ」
「落としたら合格ってだけなんだよね?」
三治郎が言う。それに肯定はせず、庄左ヱ門は少し考える素振りを見せて。
「そうとも限らないんじゃないかな。城によって落とし方は異なる。その落とし方が間違っていたらまずそこで不合格になるだろうし」
「つまり…いつ何が不合格の要因になるかはわからないってことだね」
こめかみに手をやりながら兵太夫が言う。その言葉に首肯し、庄左ヱ門はまた言葉を続けて。
「しかも集団戦だからな。誰かが何かしらミスをすれば…全てが終わりになる可能性がある」
気がつけば全員が真剣であった。なんだかんだでそれぞれがそれぞれの忍者らしさを身につけてきたようだ。
「とは言っても、いつもと違うことをしても墓穴を掘るだけだと思うし」
とくにうちの組は、と心の中で続ける。
「いつもの流れの確認だ。今日、日が沈むまでに出来る限りの情報収拾」
頷いたのは乱太郎、三治郎、伊助、しんべヱであった。
「で、日が沈んだら僕と伊助の部屋に集合」
続く言葉には乱太郎と伊助だけが頷いた。
「作戦が決まるまでに、各々いつでも出られるように準備を進めておいてくれ。どんなにかかっても一週間では動き出せるようにする」
全員が頷くのを確認すると、庄左ヱ門は大きく笑みを浮かべて。
「さて、善は急げだ。早速始めるぞ」
言いながら立ち上がると、それに合わせては組全員が立ち上がる。
「覚悟はいいか?不合格は恐くないか?」
今まで何度も言った台詞である。聞くまでもないことだが、これを言わずにはいられないのだ。
「それじゃあ、六年は組、出陣!!」
その言葉に10の声が答え、次の瞬間には教室は空になっていた。





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