23


  


照れ。


-変化すること-


夕刻。
私がいつも通りに屯所に遊びに来ると、そこには―
「…ああ、苗字か…」
いつになく気分が低い斎藤がいた。
「斎藤?」
私が呼ぶと、斎藤はビクッとしてこちらを見る。
しかし、目は合わせない。
「あ、あの…だな…」
「なんだ?」
「その…だな…今日、茶屋の前を通ったんだ」
「…へ?」


ってことは。
「もしかして、千景といるのを見たのか…?」
「っ!」
図星か。
「それで…だな、」
「うん」
「な、なま…」
「生…? 生ってなんだよ」
「…生じゃない」
「じゃあなんだ? はっきり言え」
すると斎藤は意を決したように言った。


「…な、名前で呼んでほしい…」


…は?
名前で…?
「さ、さいと」
「………悪い、聞かなかったことにしてくれ」
…そんなの無理に決まってるだろ。
「顔真っ赤だぞ、一」
そんな顔されちゃった、な。
「……!」
あ、更に赤くなった。
「……うるさい…名前」
「っ!」
―ああ、これは。
「ずるいぞ、一…」
真っ赤になるのも分かる気がする。


名前で呼ぶだけで胸が高鳴る。




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