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「名前ちゃんどこに行くの?」

『あっ沖田さん』

私は近藤さんの親戚で、人手不足だという新撰組を手伝いに来ている女中みたいなもの。

『斎藤さんに羽織りを繕うよう言付かっていたので、今持って行く所です』

「ふーん、お疲れ様」

沖田さんはとりあえずといった感じで私に労いの言葉をかけると、少し意地悪そうに笑った。

「それ、一くんの部屋に持って行くの?」

『はい……』

「残念だけど、一くんはさっき用事があるって町に出ちゃったよ」

『え!?』

今斎藤さんが町に出ているって事は、部屋に行っても意味がない……。

『そうですか…教えて頂いてありがとうございました』

「ううん、お礼は金平糖でいいよ」

『ふふっわかりました』

沖田さんの子供っぽい言葉に笑って頷く。
そしてその場から離れようとすると、また沖田さんに止められた。

「次はどこに行くの?」

『えっと…原田さんが夕餉のお手伝いをしてほしいと仰っていたので、そのお手伝いに……』

そう言うと、沖田さんは少し考える素振りを見せて口を開いた。

「左之さんもさっき新八さんと街へ行っちゃったよ。お酒でも飲むんじゃない?」

『そう…なんですか』

原田さんは今日の夕餉の当番だったはず……。それなのにお酒なんて飲みに行って大丈夫なのだろうか。
私がうーんと考えていると、沖田さんは私の手から羽織りを取った。

「もしかして暇になっちゃった?」

『……確かに今やることは特に…』

「なら僕が暇つぶしの相手になってあげようか?」

沖田さんは子供のように楽しそうな口調で話しながら私を見た。私もそんな沖田さんが可愛くてその誘いに頷こうとする。

『あ……でもその前に土方さんに何かお手伝いすることはないか聞いてみないと……』

「あの人は今、句でも書いてて忙しいんじゃない。放っておきなよ」

『でも……』

「あ、なんなら土方さんに届いた恋文の名を全部男の名前に書き換えておいてみようか。きっとそれを見た日、一日は機嫌悪いよ」

沖田さんはけたけたと笑って悪びれた様子もない。なんでこの人はこんなに土方さんが嫌いなんだろう……。土方さんも大変だなあ。
沖田さんが楽しそうに話す悪戯話を聞いていると、後ろから意外な人に声をかけられた。







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