「談笑中すまない」

『斎藤さん』

私たちに声をかけてきたのは、町に出ていた斎藤さんだった。

『おかえりなさい』

「……?」

……斎藤さんは意味が分からないといった顔で私を見る。私も首を傾げて斎藤さんを見ると、ふいっと顔をそらされてしまった。

『町に出ていたとお聞きしたので……』

「町へ?それは俺が町へ行っていたということか」

『違うんですか?』

私は少し混乱して、斎藤さんが町へ行ったと情報をくれた沖田さんの方を伺う。するとなぜか沖田さんは、不機嫌そうに腕を組んでいた。

「……俺はあんたに羽織りを繕うよう命じて部屋に戻り、それから一度も部屋の外へ出ていない」

『え……?』

「……羽織りを繕い終わったのなら……その、一度俺の部屋に、来てはくれないだろうか……」

『は、はい』

斎藤さんは部屋から出ていない……?だったらさっき沖田さんが言ってたことは嘘……?
そして斎藤さんに部屋に来てくれと言われ、沖田さんの言動に困惑したこともあって何も考えずに了承してしまった。

「ちょっと待ちなよ。僕と土方さんに悪戯する約束はどうするの」

『あの……その前に沖田さんはなぜ斎藤さんは町へ出たなどと言ったんですか?』

「願望がつい口に出ちゃった。一くんが部屋に居なければいいのにってね」

何か問題でも?と言いたげな口振りに、斎藤さんも私も固まってしまった。悪戯が好きなことは知っていたけど、こんな平然と嘘を吐くなんて……。

「苗字を独り占めにしたい気はわかるが、子供じみた嘘は……」

「名前ちゃんを独り占めにしたい気持ちがわかるの?へえ」

「……っ!!」

今にも口喧嘩が始まりそうな二人を止めようとおろおろしていると、誰かに肩をたたかれて慌て振り返った。







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