ハローハロー宇宙人さん

2

それは鮮烈は青だった。

彼の頭から、ドロリと流れ落ちた血の色に思わず息を飲む。
宇宙人の血の色は青いという常識はあっても、目の前で見るその青さに衝撃を受ける。

けれど、それよりも何よりも早く血を止めないとと慌てる。
逆に怪我をしている筈の水野さんは、自分の頭にそっと手を触れると一旦手を離してそこをちらりと見て、ため息を付くだけだった。

近くにいたすべての人が驚愕を持って水野さんの事を見ていたと思う。
ざわめきに近い音が周りから聞こえていた様な気がするけど、その時にはきちんと音として聞き取れてはいなかった。

水野さんが自分のハンカチで頭を押さえる。

「保健室の先生呼んで来い!」

何もできなくて、オロオロするばかりの俺じゃなくて、クラスメイトが他の生徒に声をかける。
この人は、多分異星人だとクラスで言われていた。

水野さんが彼と同じ異星人だということに気が付いていたのだろうか。随分と冷静そうに見える。
自分のハンカチも水野さんに渡した後「大丈夫か?」と聞いていた。

それに困った様に笑いかけながら水野さんはこちらに向って口を開く。

「きちんと自分の口で言いたかったんだけど……。」

多分きっと、今週末に話したかった事はこのことなのだろう。
彼はきちんと話そうとしてくれていた。

青く、むしろ紺色に近い血がハンカチを染めている。

バタバタと先生が駆け寄ってきて、水野さんの血を見るなりスマートフォンを取り出して電話をしている。

「救急車を呼びましたから。」

先生はそう言う。
その瞬間水野さんの顔色が曇った。


それからすぐに救急車が来た。
水野さんは自分で歩けるみたいで少しほっとする。
救急車に乗り込む水野さんが心配でならない。

青が目に焼き付いて離れないけれど、それでも彼の事を好きだという気持ちに変わりは無かった。

水野さんと同じ留学生かもしれないクラスメイトが救急車に乗り込む。

「輸血が必要になった時のために。」

そう彼は救急隊員に手短に伝える。それでああやっぱりもう一人の留学生は彼なのかと思う。

「おい。」

その彼に声をかけられて、少々驚く。
彼と話したことなんか、恐らく一度も無い。

「お前も乗れ。」
「でも……。」

クラスメイトは舌打ちをした後、苛立った口調で言った。

「この件が問題になったら、もうこいつはこんなところの学校に通えるわけないだろう。」

ガツンと殴られた様な気分になる。

だから、救急車を呼んだと言われてから、水野さんが急に喋らなくなってしまったのだ。
慌てて救急車に乗り込む。

水野さんが俺に手を伸ばす。
二度ほど俺の頭をなでると、俺に向って「ごめんね……。」と呟いた。


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