ハローハロー宇宙人さん

告白編

自覚をしてしまったらもう駄目だった。

「武藤君どうした?体調悪い?」

もう何度目か分からない問いが水野さんの口から出る。

普通が分からない。
今までどういう風に水野さんに接していたのかが思い出せないし、顔が赤くならないようにするだけで精いっぱいだ。

何を今まで話して来たのか覚えているのに、これから何を話しかけていいのかもよく分からない。

明らかに自分でもおかしいと思うけれどどうにもならない。

「今日、うちよらないか?」

ため息を一度ついた後そう言われる。
多分きっと呆れているのだろう。

なんで自分が変になってしまったのか理由は言えないけれど、水野さんの誘いは断りたくなかった。



水野さんの家に連れてこられた。
今日もうちの人は誰もいない様だった。

今まではあまり気にしていなかったことが気になってしまう。

二人きりなのだという事実に、心臓がどきどきする。

「それにしても、ここまでわかりやすいとは思わなかったな。」

困ったみたいに笑いながら水野さんが言う。
それから、俺に手を伸ばして俺の髪の毛に触れる。

思わず、ギクリと真っ赤になってしまうのが分かるのに止められない。

「ほら、分かりやすい。」

今度は水野さんは微笑んだ。

「駄目だ。駄目だよ……。」

これはいけない事だ。
今のままで、友達のままで充分幸福なのに、望んではいけない話なのだ。

外で手を繋げない様な関係に水野さんを引き込みたくは無かった。

それなのに――。

「好きだよ。」

普通の事みたいに水野さんは言って、それから嬉しそうに双眸を緩める。
怖くは無いのだろうか。

友情が壊れてしまうかもしれないってことに、男同士だってことに、水野さんが気が付いてない筈ないのに、まるで普通の事みたいにしている。

好きだって自覚をしただけで、普通にしてられなかった俺とはこんなにも違う。

「だって、俺たち男同士だよ?」
「そこは、大した問題じゃないよ。」

水野さんは言う。

「大丈夫だよ。」

今も、これからも、お互いに好きなら大丈夫さ。

水野さんは自信がありそうに言った。

「だから、そんなに怖がらないで?」

水野さんに言われて、ようやく俺も「俺も、好きだから。」と嗚咽交じりで伝えられた。



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