ハローハロー宇宙人さん
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授業の終わりのチャイムが鳴るまで、俺は自分の絵に集中するしかなかった。
結局、俺が描いたのは野原のようななにかだった。
本当にそんなものが、心の中にある訳ではない。
普通に無難な何かを描いただけだ。
だから、水野さんもそうなのかもしれない。
別に何となくで描いたものなのかもしれない。
それを親戚と濁したのも、特に意味は無かったのかもしれない。
かもしれないばかりで、お笑いだ。
友人なのだ。ただ、聞けばいいのに、切り出せない。
無理ならば、授業の絵のモチーフにしただけだ。忘れてしまっていいことなのにひっかかりの様なものを感じてどうにもならない。
まるで、何もかも恋人の事を知りたがる女の子みたいだ。と思ったところで自分の考えに愕然とする。
だって、それはまるで……。
誰かに対して、そういう気持ちになったことが無いから、比較できない。
だけど、それは友達に向けてはいけない感情に思えた。
「武藤君、どうした?」
具合でも悪いのかい?
水野さんが俺に聞く。何も返すことができなくて「なんでもない。」と言う。
水野さんは不思議そうな顔をして、それから「ならいいんだけど。」とだけ言った。
ああ、これはまずい。水野さんを心配させてしまった。
この前、二人で映画を見に行った時感想で異星人の様だと言ってしまったけれど、これは俺が異星人になってしまったみたいだ。
昨日までと見えている世界がまるで違う。
自分の感情にどう向き合ったらいいのかも分からない。
それでも、やっぱり水野さんの事を知りたいと思った。
了
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