ヴァリアーピンヒール企画提出物(XS♀)
※XS♀














猫に小判、豚に真珠。
身の丈に合わないモノを持つ小者は何とも滑稽で鼻で笑おうが気づかない神経の図太さを持つ奴が多い。まあ周りから笑われてるのも知らずそれを振りかざしたいなら好きにすればいい。
だがそれとは対局に位置する宝の持ち腐れを見ると舌打ちしそうになる。

一番身近な女がそれだと言って良い。

S・スクアーロは宝の持ち腐れをしている。
町を歩けば男どころか女まで振り返る整った顔の作り。
陶器を思わせる滑らかな白磁の肌。
意志の強さを感じさせる凛とした銀の瞳。
既製品の股下が足らず毎度オーダーメイドするようなモデルなどよりよほど長い足。
抱き寄せたら折れてしまいそうな細い腰。
まあ最後はオレがバックドロップ決めようが体勢立て直して噛みついてくる元気があるのでおそらく体のつくりも骨の頑強さも人智の限界を超えた造りをしているのは間違いないとして―――だが。

重ねて言おう、宝の持ち腐れであると。
声はでかいし、下手な野郎よりよほど力があるし、しずしず歩くとは程遠い騒音で歩く。
そこまで立派な足音たてねぇと前進できねぇのか!?今の悲鳴と爆音は一体…!?と言うことがヴァリアーで起きた場合の原因はオレじゃなきゃ9割9分カス鮫である。

しかも服もパンツルック、靴もワークブーツ、ベルトも男物を好むし、悲しきかな抜群の細さしなやかさを誇るその身体は唯一の欠点としてほぼ平ら。

日本風に言うならばMOTTAINAI。
ルッスーリアもそう思うらしく常々もったいないわぁ、と零してはルッスーリアの趣味のテラテラした露出度凄まじい服などを贈られているが、着ているのを見たことはない。まあ確かにオレが女だとしてあんなの贈られたらその場で消し炭にしてルッスーリアもろともゴミ袋につめて焼却炉に叩き込むがスクアーロは基本的に相手から厚意と思われるものに対して拒絶する頭がないらしい。

笑顔で、とは言わないがものすごく引きつった顔で受け取っては部屋に肥やしが増えていくと嘆いていた。アホの極み。
しかして何がいいてぇのかと言えばお前はその見た目の価値に気づくべきだと言うことだ。オレにぼかぼか殴られ蹴られて痣まみれなのも粋と感じさせてしまうほどの麗しい見目を、その半分でも利用しようと思えば違った人生だって見えるだろ、と思うほどなのに。
スクアーロが気づいたとてオレから離れていくとは思っていないから、と言うのもあるがそれならばオレのために少しは見た目に気を遣って女らしい格好だってしたらいいものを。
器から入れば少しは変わるかも知れない―――そう思い至って行きつけの靴屋に行き、白い肌に映えるだろう、赤い10cmのピンヒールが目にとまりサイズを確認して買い上げ、今夜だけでも姫君扱いしてこれを履かせてやろう。思えばあいつにプレゼントなんて、いつやっただろうか。



*



白く細く長く、しなやかな脚は色香を感じさせ、外に出せば誰の目をも奪うのだろう事が容易に想像できる代物だった。
外で出せとは言わない。それはオレが知っていれば十分なことだからだ。
だが、オレの前でくらいかわいい所作を覚えろ、そういう意味合いのつもりだった。
事が終わり、ラッピングされた箱を見せてやれば首をかしげて。



「くれるのかぁ?」

「…開けろ」



何かの褒美だろうかと判断したらしいスクアーロはにぃっと、やはり勝ち気に笑いリボンをほどき、箱を開けた。見て、数度瞬きしてる。



「おお…オレに、かぁ?」

「他に誰がいる」

「すっげぇの選んできたなぁ」



取り出したそれを矯めつ眇めつ見て、何が珍しいのかひっくり返してしげしげと。



「オレ女物なんかはかねぇから、よくよく見たのなんて初めてかも知れねぇ」

「履かせてやる。よこせ」



天変地異でも起こるのか!?と言うものすごい失礼極まる心の声がにじみ出た顔でこちらを見て、逡巡した後に俺の手に宝物を渡すかのようにそっと置いて。



「よ、黄泉の旅路へそれはいて行けって事かぁ!?」

「はぁ?」

「そんな攻撃力高そうな靴を、」



ゴッ。こいつオレの気も知らずに!!と、いつもの癖で手に持った物を投げてしまいピンヒール部分が額にクリティカルヒットし、スクアーロが額の中心から血を流しながらベッドに倒れ込みぐああああと転がりまくっている。
ベッドが血に濡れたし暗殺者として弾ならば即死間違いない位置にぶち当ててしまい我に返った。やべぇ、女扱いするつもりがいつもの癖で思い切りやってしまった。やはりこいつを女にするのは無理だった(オレのメンタルの問題で)。




真っ赤なヒールが血に染まる。
(らしいといえばらしいオレからの初めてのプレゼントの末路)


20140409.


くうちゃん主催ヴァリアーピンヒール企画提出物…(´・ω・`)なんか素敵企画なのに美しいヴァリアーにできなくて申し訳ない気持ちでいっぱい
お読みいただきありがとうございました!


渡季

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