天使と悪魔パロXS


グリーンアップル味のハイチュウがきれた。

天国行きの亡者の列をただしながらさすが天国行きだけに悪さをする輩も列を乱す輩もここ数百年見たこともない。
そんな連中相手に人数をカウントして名簿と付け合わせたりただ見ていたり退屈にもほどがある職場で唯一の楽しみは現世の甘味だった。
最近はハイチュウのグリーンアップルにはまりひとつきほど前買い込んだのだが、もう切れてしまったらしい。舌打ちをして受付でニコニコしている金髪の甘いマスクで性格が良いとか言う、名前は何だったか…確か好きな女に受付の××(そこだけ思い出せねぇ)くんが好きだからと断られた連中が、コイツに馬に顔面蹴られろ!!と罵詈雑言を浴びせたいがために羽を切り落として堕天したと噂があるが…馬…顔面…馬…馬しか印象に残ってねぇ…。まあとにかくそいつに声をかけて抜け出す。現世土産はチュッパチャプスが良いとか言ってウィンクをして見逃されたが…何故だろう下まつげを全て引っこ抜いてやりたい衝動に駆られた。甘いマスクも野郎には通用しないらしいっつーか男にウィンクされても気持ち悪ぃ。

そんなことを考えながら現世へ。コンビニに行けばハイチュウグリーンアップルもチュッパチャプスも両方あるだろ、とチュッパチャプスを買い占めるべくコンビニに足を向けた。


*


ない。
ハイチュウグリーンアップルがない。

無論オレは新世界の神ではないから「この家でコンソメ味は僕しか食べない」などとは言わないし、オレの味覚にも合うのだから現世の連中にだって好きな奴はいるだろうしそもそもそうでなければ商品として成り立たない訳だが、どこの店に行ってもハイチュウグリーンアップルは無くチュッパチャプスがあるばかり。
チュッパチャプスの沢山刺さった山はすでに3つも袋に入っているしこれ以上欲しいとか言ったら自分で取り寄せろという話だからもう馬野郎への賄賂は良いとして、どの店も「品切れ中」と店員が頭を下げたポップがあったり何かのマンガの絵で「ハイチュウは!!駆逐されました!!」と書いてあるし次回入荷未定とか書いてあるし、クソッ、ないと思ったら是が非でも食いたくなってきた!
13件目で店員に殺意全開で「何故ハイチュウグリーンアップルがねぇんだ」と詰め寄れば、最近流れたCMの効果で、なんでもやたらと美形な俳優だかなんだかが宣伝したせいで女がこぞって買い占めているらしい。
ここでも女は美形を追いかけるわけか。美形を追いかけるのはかまわねぇが平素ご愛顧している客をないがしろにしやがってと、馬野郎に罵詈雑言吐きたくなった連中の気持ちが分かりとりあえずチュッパチャプスの山の中から一本抜いて口に入れたが何の慰めにもならねぇ。
その美形俳優は馬に顔面蹴られろ!!と舌打ちをしながら次の店に向かおうとコンビニを出たら、ぶわりと黒い風が辺りを巻いた。
スピリチュアルな力がなければ見えないだろうそれに眉を寄せ、風が噴き出すそちらを睨み据えれば、銀髪に黒い服を着た男が立っている。気配に気づいて振り返ったオレに嬉しそうに唇をゆがめたその顔は。




「よぉ、やっぱりお前天使だよなぁ?」



美形だった。



「天使様が現世に何のよ、」
ゴシャアアア!!!


頭の血管が切れる音を聞きながら怒りにまかせて人間ならば頭が消し飛ぶだろう一撃を顔面に叩き込めば、コンビニの壁に美形がめり込んだ。
ばきぃっ。間髪入れず口の中のチュッパチャプスを噛み砕いて棒を噛み締めながら握りしめた拳を腹にたたき込みえずいた頭をかかと落としで沈め踏みつける。



「っ、がッ!?」


体重をかけミシミシと頭蓋骨がきしむ音を足で聞いていれば、暴れる元気があるらしく足に手をかけようとしたのでその手を蹴り上げ横たわった体の細い腹に蹴りを二発たたき込む。当然革靴の先で鳩尾をピンポイントだ。


「がはっ!!…てっ、テメェ…!普通天使が悪魔より先に暴力振るうか!?」

「ああ゛?悪魔が天使に禅問答しようってのか?非暴力なんざクソ食らえだ。神話を見て見ろ、悪魔より神の方が人間ぶっ殺してる」

「…!!」



へし折れたチュッパチャプスの棒をそいつに吐き捨て睨みつける。



「二度とそのツラをオレに見せるんじゃねぇ」



今のオレにその美形なツラを見せたのが悪ぃんだこのカス悪魔が!!!と立ち去ろうとすれば、まだ負けていないと言いたいのか足首を捕まれたので舌打ちしながら振り返れば、そいつはオレを…なんだ…ヒーローショーを見る子供のような瞳で見上げてきていやがる。



「お前!なんて悪人面だ!!オレと堕天しねぇかぁ!!」



褒めてるつもりか?とこめかみが引きつり、もう一度そのムカつくツラに靴底を味わわせて完全にその悪魔(美形)を落としてから次の店に向かう。
今はこいつよりハイチュウグリーンアップル味が先決だ。
と、次の店でもやはりハイチュウグリーンアップルは売り切れていたが、どこの店舗でも持ち去られたりしてしまったと見られなかったハイチュウグリーンアップルのポスターが貼られていた。


さっきの悪魔だった。


よし、息の根を止めに戻ろう。



(堕天する気になっ――ふがぁっ)(カッ消えろ!!!)



20130131.


楽しかった(笑)


渡季


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