家庭教師XS♀
オレの後を雛のようについてくる女だったように思う。
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昔から一緒にいるがスクアーロは元々頭悪くねぇし成績表はだいたい文句のつけようのないものしか見たことなかったくせに、オレが大学に進学してからオレに家庭教師を頼んできた。
曰く、オレと同じ大学に入りたいから監修してくれ、とのこと。
お前の頭ならそんなもんつけなくても問題ねぇと何度か断ったがそりゃあもうしつこくしつこくしつっっっこく誘われたのでこいつの頑固さと粘着質とさえ言える粘り強さを知るオレは諦めて家庭教師をすることになった。
しかしやることと言っても先ほど述べたように成績はもともと悪くないしだいたいのことは一回言えば理解するし授業聞き流してりゃ教わることももうねぇだろ、と一応うちの大学が贔屓にしている問題集をやらせて採点したりする。
が、やはり知識ムラも抜けもないので単純な足し算間違えたりスペルミスが時たまあるくらいで、後は軒並み丸なのだ。
オレが自由にして良い時間を割いて、やることと言ったら足し算とスペルミスの間違い探しなんて時間を無駄にしているにもほどがあると思う。
くあ、あくびを一つ。
退屈だし、何を思ったか朝から呼び出されているのだ。昼前だがすでにやることは無い。
「暇かぁ?」
「暇だ」
「わるい、もうすぐ終わるからよぉ。終わったら何か作るぜぇ」
「今受けてもお前なら落ちようがねぇって何度も言ってるだろうが」
「………」
「日曜の朝くらい寝かせろよ」
「でも、」
「あ?」
スクアーロはなんだか口ごもってオレを見て、一度参考書に目を落として逡巡してから意を決したようにオレの手を掴んで目をのぞき込んだ。
「お前を野放しにしたくねぇ」
「はぁ?」
「ほっといたら他のやつのになっちまうかも知れねぇだろぉ!?」
何が言いたいか。
オブラートや情緒なんて言葉を知らなそうなスクアーロの言いたいことだ。
ここまで言われれば馬鹿でも分かるだろう。
手を握る力が強まって、唇が開きかけたのを自分のそれで塞いで奪い取る。
「!!」
顔を離す。スクアーロの顔を見ていれば、驚愕したままの表情でみるみる頬を紅潮させていくのは何とも見物だ。
「オレとこういう勉強がしたいって?」
リップ音を響かせ押してやれば、真っ赤な顔を今更俯かせて頷いた。
ふ、鼻で笑いもう一度キス。
落ち着いても拒絶はされずにそのまま融けるように目をつぶった。銀色のまつげが伏せられて、なんとも美しい。
なんだ、それならいくら5教科教えたって意味なかっただろうが。
今までの時間分、取り戻させてもらう。
働き蜂に甘いご褒美
(社会勉強も教えてやるよ、ひな鳥)
20140108(title:反転コンタクト様).
RTありがとうございましたーっ!!