学生両片思いXS



自分の世界の範囲って言うのはどこまでなんだろう。
手の届く先?
顔が見える先?
声が届く先?

とにもかくにも、そんな近い世界しか制することができないにもかかわらず、世界一思う相手が某かのコミュニケーションが許される範囲内に居るというのは奇跡に近い。
触れたい。触れられたい。
そのためなら全力投球するしか無いのだと。
走って走って追いかける。
声が届くまで、
手が届くまで。

今のオレにはこれしか無い。一回届けば良い。大丈夫だ、一回届いたら。
掴んで二度と放さない。
しつこさには、自覚も定評もある。


――届け届け、この想い!


*


「よぉ!」

「…またお前か」



ほぼ使われない専門教科準備室でサボっているXANXUSに逢う為にオレもこの教室が使われない時間を狙ってサボるようになったのはいつからだろうか。
最初は、偶然オレが入ってしまったこの教室にXANXUSが居たのが始まりだった。
ぽつり、剣道部のスペルビ、と呟いたそいつは面倒くさそうに舌打ちをして教室から出て行こうとしたので、名前知られてる奴にサボりがばれたら面倒だと思ったオレはそいつの腕を掴んで口止めをしようと思ったのだが、掴んだ瞬間には視界が急旋回していた。
ズッダーン!他人事のように聞こえたその音と衝撃に瞬きを何度かしても痛みも現実も追いついてこなかったのを覚えている。
血をこぼしたような双眸に睨まれて、なんというか、ずあああっ!!と背筋を試合に勝った後のような、とにかく歓喜に震える、と言ったような表現が正しい何かが駆け上がって頭に届いた。
被虐趣味は無いが、このときばかりは全然痛みも気にならない。
14歳。遅い初恋だと確信する。



「触るんじゃねぇ」



刺すような言葉に鼓膜を通して惚れ込んだ男のテノールが走って信じられないくらい快楽中枢が刺激され、オレは思わず大声を上げた。



「お前!名は!?」

「………はぁ?」



そんなふうに、初めて交わした会話からかれこれ半年。

正直、クラスメイトが色だ恋だとはしゃぐ気持ちが全然分からなかったオレが初恋をして変わった。
――絶対こいつを手に入れてやる、と。

普通の会話をするのにさえ随分と時間を食ってしまったが、それでも学校内で一匹狼なこいつの中では俺が学校で一番話す人間だろう。
俺が話すことに対してだいたいははぁ?とかああ?とか、校内模試で毎回3番以内に入るやつのボキャブラリーとは思えないような返事の短さでしか答えが返ってきた試しは無い。
なるほど、これがクールな大人の対応ってやつなのか!さすが今まであってきたやつとは格が違うぜぇ!そんな恋をしたてのポジティブシンキングに飲まれながらも、いつか、XANXUSは学年が違うから卒業する前にはどうにか告白したいと思っていた。



「XANXUS、隣いいかぁ?」

「…………」



視線でダメっつっても聞く耳なんか持たないくせにきくんじゃねぇと殺意ばりばりでいわれたが全然気にならない。
むしろ最初虫でも見てるかのような視線だった男がここまでオレに興味を…!!オレが特別になったって事だなぁ!的なことを考えながらXUNXUSが座る椅子の隣にあるデスクに背をもたれる。



「今日は話があるんだぁ」

「お前に話がない日なんてねぇだろうが」

「そう言うなぁ」



ぎぃっ。XAXNSの背もたれに腕をついて覆うように逃げ場を無くし、惚れ込んだ真っ赤な目をのぞき込む。



「付き合ってくゲフゥッ!」



ドッカ!腹に思い切り蹴りが入り吹っ飛ぶ。
壁に叩きつけられ咳き込みながら一人脳内会議を開始。
なっ、なん…だと…?今の、告白する感じばりばりのところで…無防備な腹に…人が一人飛んでくほどの蹴り…!?すげぇ、なんて容赦ない男なんだ!いや、これもしかして限界まで嫌われてねぇか?いきなり告白してこようとした相手の腹蹴るとか!あっ、いや違う、もしや…照れてやがるのか…?ああ、顔面近かったし椅子との間に挟んだりしたからなぁ。なるほど、さすがのこいつも照れて、「キモイ真似すんな」言葉責めのフルコースまで降ってくるとは…はっ。なるほど、ドMにはたまらねぇな。うん、泣いて良いかぁ?


真っ直ぐこちらに歩み寄ってくる足を見ながらえづいて居れば、壁、ちなみにオレの顔面の真横に長い足がガツン!と入り見上げる。先程と真逆の状況に追い込まれながら、おお、男前…!って違ぇ!もしかしてガチに殺されるコースかぁ!?



「キスするなら口じゃ無くてこっちにしろ」



左手を出されて固まる。
よくわからない、が、しかし、唇よりもこっちが良いというのだから、と未だ痛む腹をこらえ、左手をとって口づけた。



「こ、これでいいのかぁ?」

「は。いいだろう。付き合ってやるよ」

「えっ」



ぐいっ!頭が展開について行かないうちに襟首を乱暴につかまれ腰が浮いたと思ったら唇にキスが落とされた。


そのキスは思ったほど乱暴じゃ無かった。




20131119.


ついったでRT貰った学生両片思いXSでした!
スクアーロがアホ全開ですみません(´・ω・`)←


渡季
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