執事と主人の関係で浮気と勘違いして喧嘩するボスカスの漫画または小説2
がしゃーん。
普段は銀食器を並べるときもプロフェッショナルを感じさせ擦れる音ひとつさせないスクアーロが銀器を落としたのは大変珍しい事だった。客が来たと言うのでコーヒーと茶請けを用意して応接間に行った時のことだ。
主が、以前から親交のあった女にソファに押し倒されていた。
固まったのはスクアーロと女だ。XANXUSは相も変わらず涼しい顔で女の肩を押せば、女は挨拶もそこそこにふらふらと応接室から出て行った。
「………う゛ぉおい」
「あ?」
「………あの女、誰だぁ」
「いつだったか行った夜会で挨拶してからしつけぇ女だ。今日は強行しようとしてたらしいがな」
「………」
強行。まあ確かに、それならば女の独断なのだろう。
しかし、である。XANXUSが本気で嫌がっていたのならば先ほど肩を押しただけであの女が帰ったように、押し倒される状況にすらならないはずで。つまり俺が来なかったらそのままなだれこんでいたかもしれなわけだ。
「応接間でことに及ぼうなんざ良い度胸じゃねぇかぁ!!」
「はぁ?なんでそうなる。なだれこんでないだろうが」
「どうだか。なだれこんでたかもしれねぇだろぉ!さっきの様子じゃあよぉ」
「するわけねぇだろ」
嫌に断言する主がローテーブルをトントンとたたいて座ってコーヒーを置け、の合図を出したので号令が沁みついた体が動き、先ほど女が座っていたところに座り、あてつけのように音を立ててコーヒーと茶請けを置いたら、XANXUSはオレの顔を見てはにやにやとしていてなんだかムカつく。
「……にやにやするんじゃねぇ」
「あ?なんでだ」
「………」
「ぶはっ!」
「何で笑うんだぁ!」
「お前がいるからわざわざ浮気なんかしねぇのにそんなちいせぇ事にいちいち不機嫌な顔をするバカがおかしくてしょうがねぇ」
「…!!」
コーヒーを傾けながら鼻で笑った主は、いつものように色のある表情で顔を近づけて、静かに口づけをして顔を離していった。
「何か言うことはあるか?」
「……なにもねぇよ!」
20130916.