case.14


「そう考えればすべてのツジツマがあう…この足跡にしても、犯人は少なくとも歩くことができる人間だと印象付けるためのものだったわけだ!」
「郷田事件の時あたしと紫苑にエレベーターホールに残れと指示したのも団先生でしたね!」
「あれは瞬間記憶能力者のメグや、空間図形が得意な私が現場に一緒に行ったらトリックが崩れてしまう可能性が高いと判断したからじゃないですか?」
驚愕に顔を歪める4人を差し置いて、ここぞとばかりにリュウたちが畳み掛ける。
「答えてください!」
半ば詰問するように団に詰め寄る。
「――では私から、ひとつだけ質問がある。動機は何だね? この私が自分の後継者候補である三人をどんな理由で殺さなくてはならないのだ? この質問に答えられなければ、この私を犯人扱いすることはできんぞ!」
団が逆に、キュウに尋ねる。キュウは言葉を濁し、言い淀む。

「うわああああああ!!」

「!?」
突然叫び声が聞こえ、階段の上に血まみれでへたりこんだカズマが現れた。
「か……カズマ君! どうしたの!? 血まみれで…!!」
「た…助けて! き……キンタが…キンタが…切り裂きジャックに……!」
「なんだって!!」
カズマの言葉に、キュウとリュウが顔色を変えて慌てる。団も驚き、全員で急いでカズマの言う部屋に走った。



「キンタ!!」
「どうかしたの!? キンタ…」
「!!」
キュウと紫苑が同時に部屋に飛び込むと、そこには首、胴、両腕、下半身の四つにバラバラにされたキンタの死体があった。
凄惨な光景に、団が車いすで部屋に入り、呟いた。
「ど…どうして遠山君が切り裂きジャックに……?」
まるで真犯人を知っているような口ぶりに紫苑がにっと口の端をあげると、その瞬間、キンタの首が目を開き、かっと団たちを睨みつけた。
「ひっ!!」
白峰と桜子が青い顔をして悲鳴をあげると、「なーんちゃってね」、といたずらをしている子供のような笑い声が聞こえてきた。
「これが動機ですよ! 団先生!!」
にっこりと笑ったキュウが告げる。
「本当は誰ひとり死んでなんかいない! この切り裂きジャック殺人事件こそが探偵学園の最終試験だったんだ!!」
「僕は以前、真犯人は僕らに挑戦してきていると言った。その直感はある意味正しかったわけですね…!」
リュウが晴れやかな表情で付け加える。
「ホント! すっかりダマされちゃった!」
メグとカズマがにこにこと笑いながら、けれど安心したように団を見る。
「――本当、よく考えたものだよね。この殺人はひとり、またひとりと殺されるたびに――死体が切り刻まれパーツがひとつずつ増えていった…!」
紫苑が口を開くと、キンタがベッドに手をついてずぼっと出てきた。そしてあちこちに転がっている死体のパーツをひっぱりだすと、そこには、死んだはずの三郎丸、獅子戸、郷田がいた。
「それもそのはずさ! 死んだハズの人間が――それぞれ死体のパーツを演じてたんだからよ!」
悪態をつく郷田に、どこか体の節を痛めたらしい獅子戸、そして微妙にぼんやりしている三郎丸の姿に、キュウたち六人以外は呆気にとられていた。
「この建物のあちこちにあんなふうにあらかじめ体の一部を隠すスペースを作って切り刻まれた死体のふりをさせたんだ!」
「一番初めの三郎丸事件の時は、縦にまっぷたつにされた血まみれの死体を目の当たりにしたショックで死体の残り半分出てこないことまで考えられなかったけど、出てくるわけがないんだよね。半分埋まってるだけで、実際にふたつになっていたわけじゃないんだから!!」
コンクリートに横たわっている三郎丸を想像したのか、紫苑がくすくすと笑いながら説明すると、キュウがぱっと説明を受け継ぐ。
「でも毎回体の一部がないとさすがに怪しまれるでしょ? だから二人目の時からちょっと凝って穴をあけたベッドに上半身を出した獅子戸さんと、部屋の壁の穴から下半身だけ出した三郎丸さんの二人でよりリアルにバラバラ死体を演出したんだ!
 そして三人目の郷田さんの時はさらに凝って、首の郷田さんと胴体の獅子戸さん、腕の三郎丸さんの三人がかりで凄惨なバラバラ死体を演じてたんだ!」
「ダマされてると気づいてから大急ぎで建物中捜したら――死んだハズのこの三人が、しっかり隠れてたよ!」
キンタが、だから当て身をくらわせて死体役≠演じてもらったのだと言った。
「雪平さん! あなたは切り裂きジャックが怖くて部屋に閉じこもってたはずなのに――こっそり部屋を抜け出してジュースを取りに行ってましたよね。部屋の中にジュースの缶がひとつ多かったの、あたし見てたんです。それって本当に殺人鬼が怖かったらできないことですよね」
メグが、桜子に向き直って尋ねるというより、確信に近い言い方をした。
「ということは、死体に化けてた三人だけじゃなくて雪平さんもグルなんじゃないですか? そして雪平さんと顔なじみだった白峰さん――あなたも仲間なんでしょ?」
「たぶん初めからこの四人は学園側が最終試験のために送り込んだキャストだった…!」
「――でもって、その殺人事件実戦テストの答えはさっき解明したとおり……団先生が真犯人=v
何も言わずに顔を手で覆う団に、キュウはおそるおそる「…で、いいんですよね?」と確認した。思わず怒ってしまったのではないかと思ったキュウがドキドキしながら団の様子をうかがっていると、突然団が大笑いし始めた。
「ワーッハッハッ!! いや〜まいった! まいった!!
 すべてのトリックと犯人の正体を暴いた時点で合格のつもりだったんだが――ここまで見抜いてくるとは…! なかなかあっぱれだぞ、諸君!!」
団の褒め言葉に、紫苑たちは顔を明るくした。





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