赤司、藤崎、紫原(with虹村)の順で廊下を進む。先程職員室へと向かう際に使った左側の階段を使い、今度は1Fへと下りる。高尾や伊月がいないのでどこから卒業生が来るかは分からないので慎重に進んでいく。肩にズシリと喰い込むライフルバックが動きを鈍らせる。



1番下まで階段を下りきり、すぐ脇にある左の曲がり角へと向かう。壁に背中を付け、廊下の先を覗き込む。卒業生はいない。赤司にサインを出し、先に進ませる。



突き当たりを曲がって少し歩けば、見えるのは女子トイレのプレート。そしてその左斜め前に放送室。女子トイレの前に伸びているT字路の先を見れば、会議室と書いてあるプレートが見える。扉に付いている窓を遠目から覗けばチラついた桃色の髪の毛。その鮮やかな色彩になつめはホッと息をついた。



「あれですね、会議室」
「うん。意外と近いところにあって助かった」



鍵が掛かっているであろう会議室の扉をノックする。窓からヒョコ、と実渕の顔が覗き、今開けるわね、と鍵を外す音がした。紫原が入ったのを確認し、なつめは再び扉に鍵を掛ける。床にライフルバックをドサリと起き、はぁ、と座り込む。セーフティーエリアに辿りついたせいか、今まで張り詰めていた緊張感が解けて一気に疲労感が襲ってくる。



「お疲れ様です、藤崎さん」
「うん。赤司もお疲れ」
「はー……、虹キャプ重かった……」
「紫原、虹村のこと運んでくれてありがとう」
「俺しか運べる人いないしねーこのチーム」



ソファーにそっと虹村を寝かせた紫原の言葉に、確かにそうだなと赤司と苦笑いする。どうやら会議室にもタイマーは鎮座していたようで、なつめはタイマーを見やる。ゲームが開始してから1時間30分程。後少し経てば次の探索班が会議室にやってくるはずだ。それまでに少し会議室内を探そう、と立ち上がる。どうやら赤司も同じ考えだったようで実渕に会議室についた時の様子を聞いている。



「私たちが会議室に入った途端、タイマーの電源がついたのよねぇ。それから、腕時計の針に変化は無し。36分のままだわ」
「取り敢えず、校則が書かれた紙と拾ったメモ、実渕さんが書いたメモは持ってきたよ」
「……そうか。ということは、まだ会議室の探索はしていないんだな?分かった。ありがとう、実渕、桃井」
「木吉、膝は大丈夫?痛まない?」
「藤崎ありがとう。大丈夫だ」



ニッコリ笑う木吉にホッと息をついた。なつめも良かった、と微笑み返す。それにしても、と会議室内を見渡す。軽く普通教室2個分はありそうな広さ。そして成人男性が寝そべっても足がはみ出ないくらいに長いソファーが2つ、机を挟んで向かい合っている。会議室後方にズラリと並べられた縦長いロッカー。ネームプレートがあるが、名前は入っていない。会議室前方の扉の近くの隅には、何故かシンク台。水道、ポットもあり、何10個ものカップやインスタントのコーヒーやココアまである。



「まるでここで休んでくださいと言わんばかりの用意周到さだな……」
「……まぁセーフティールームみたいなものだろうし……使ってナンボだろうから」
「えーじゃあココア飲んでも良いのー?」
「皆が来てからね、アツシ」



やったー!とニコニコする紫原に何だか癒されるものを感じるなつめ。取り敢えずロッカー開けてみるか、と扉を片っ端から開ける。



1番目のロッカーから10番目のロッカーには、人数分の毛布が入っていた。やはり、睡眠はセーフティールームで取れということなのだろう。なつめはソファーに横たわる虹村にそっと毛布を掛けた。……そして、問題は次である。2個、3個と開けていくと、何番目かのロッカーにある物が入っていた。ダンボールに入っているようで、取り敢えずロッカーから出してみる。意外と重く、ガチャ、と金属音が響いた。もしかして、と思いビリビリとガムテープを剥がしていけば、予想通りの物が入っていた。



「赤司!」
「……!……これは……」
「グレネードランチャーに、手榴弾……良かったー……あんまり過度に動かさなくて」
「数に限りがありますね……使う場面を見極めて、慎重に使わなければ」
「そうだね」



中から出て来たのはグレネードランチャーと手榴弾。手榴弾はボールを扱う彼らにとって、コントロールは簡単でそれでいて威力は凄まじいものだろう。ただし、扱いは慎重に行わなければいけないが。緑間や日向、桜井に実渕……SGあたりが最適な武器だろうか。



ダンボールに入っていた手榴弾の数は8個、グレネードランチャーは5個だ。数に限りがあるということは、裏を返せばそれだけ卒業生に影響を与える武器、ということだ。的確にヒットすれば1発で卒業させることが出来るかもしれない。なんとも頼りがいのある武器である。



最後のロッカーを開ける。中に入っていたのは1つの大きい紙袋と、4本の鉄パイプ。……何故に鉄パイプ?まぁ思い切り振り下ろせばダメージを与えることは出来るのだろうけど、卒業生に近づくのは少々躊躇いがある。それこそ、近づいて襲われたら意味が無い。自分達が最初に見た卒業生は武器を持っておらず素手だったが、他の卒業生が武器を持っていないとも限らない。



紙袋と鉄パイプをロッカーから取り出す。鉄パイプは手榴弾とグレネードランチャーと共に床に置く。これまたガムテープで口を閉じられている紙袋をビリビリと破いていき、中身を覗くとなつめの顔色が変わった。



「藤崎さん?」
「どうしたのー?」
「なつめ先輩……?」
「どうしたんだい?」
「何かあったのか?」
「藤崎ちゃん?」




































「キャーッ!!!ベレッタM92!私の相方!!しかもホントに私の!何か本物になってる!っちょ、M1911!?これ米軍最新モデルじゃない!うわうわ換えの弾丸こんなにあるの!?使って下さいって言ってるようなもんじゃん!しかもパラベラム弾なんだね最高!」


















数分後
















「……藤崎さん」
「ご、ごめん赤司……つい興奮しちゃって。こんな状況で何してんだって分かってるんだけど……」
「分かってるなら自重して下さい」
「スミマセン…………」



仁王立ちして、正座するなつめをニッコリと見つめる赤司。対するなつめは縮こまるばかりだ。非常事態であるにも関わらず、はしゃいでしまった事に反省はしているのだろう。負のオーラが半端ない。



「次は無いと思ってくださいね?」
「了解です…………」



もういいですよ、と赤司からお許しを貰ったなつめは立ち上がる。そして、再び紙袋の中の物を取り出し、机の上に並べていく。おお、と木吉が感嘆の声を上げた。



「ベレッタM92が2丁、M1911…通称コルトガバメントが3丁……しかもパラベラム弾。最高ね。素人でも比較的扱いやすい拳銃だよ」



なつめはニコニコとしながら拳銃を見つめる。そしてベレッタを手に取った。久しぶり、と言ったなつめに疑問を持った赤司達。



「……久しぶり、とは?」
「…………このベレッタね、私のなのよ。トイガンだったはずなんだけど、何でか本物になってる。……それにしてもどうしよう……私はスナイパーよりベレッタの方が慣れてるしなぁ」
「……スナイパーライフルは扱いが面倒だと仰ってましたよね?」
「んー、まぁね。ヒットすれば問題ないんだけど、当たらなかったら荷物になるだけだから……」
「なるほど」



セーフティーが解除されていないことを確認して、なつめはベレッタ2丁を共に紙袋に入っていた自身のホルダーに仕舞う。ついでに、と換えの弾丸も仕舞っておく。



「……あら?ねぇ、紙袋にまだ何かあるわよ?」
「……これ……、メモ、ですね」





















卒業生は声や音には反応しない

どうして俺達を認識出来るのか?

俺達は名札や腕章が卒業生にとっての

目印になっていると考えた。

























コンコン



「「「!!」」」
「高尾です!岡村班、花宮班、着きました!」

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