岡村班、花宮班が合流し、その10分後に今吉班、笠松班が合流してようやく会議室に全員が揃った。皆、会議室の広さに驚いている。これだけの人数が揃ってもまだまだ窮屈に感じないのだ。なつめは床に座って休んでいる彼らに声をかける。



「珈琲かココア飲む人ー?」



そう問いかければチラホラと手が上がる。取り敢えず誰が何を飲むかを尋ね、マグカップの数を数えて足りるかどうか確認する。



「えーっと、今吉さんと赤司、花宮に諏佐さん、氷室くんに岡村さんと福井さん、実渕が珈琲で……、桃井ちゃんと黒子、木吉と高尾くんと紫原に葉山はココア…………っと、うん。足りる足りる」
「藤崎先輩、僕も手伝います」
「っうぉ!?く、黒子……、ありがとね」
「いえ。藤崎先輩もお疲れ様です」
「なつめちーん、俺も手伝うよー」
「ホント?ありがとう紫原」



鼻歌を歌いながらそれぞれのマグカップにココアの粉末を入れていく紫原。1つだけ大きいカップに大量に入れているのは自分用だろう。うん、察した。ポットのお湯は湧いていたので、黒子が用意したマグカップにドリップしていく。本格的な珈琲も淹れたいところだが、生憎機械は無いし、そんな余裕もない。お盆に分けてマグカップを乗せ、黒子が珈琲を、紫原がココアをそれぞれ所望した人に渡す。藤崎は頭脳陣の分の珈琲をお盆に乗せ、集まって話し込んでいる彼らの元へと向かった。



「おかしいと思わんか?2−6で卒業生を見たっきり、その後1度も見とらん」
「……嵐の前の静けさ、でしょうか」
「単にタイミングが合わなくて遭遇しなかったって線もあるが……流石にそれはないな」
「おまたせしました、珈琲どうぞ」



3人の前にマグカップを置いていく。ミルクと砂糖はご自由に入れてください、と言ったが、3人ともブラックのまま口をつけた。



「おおきに。藤崎さんは飲まへんのか?」
「私はまだ大丈夫です」
「ほーか」



4人で校則が書かれた紙、実渕が書いたメモ、発見した2枚のメモを見る。今吉がなつめの顔を見て問いかけた。



「今、卒業生について考えとるんやけど……藤崎さんの考えも聞かせてくれへんか?」
「私のですか?なんでまた?」
「バァカ、サバゲーとホラゲをどっちも経験してるんだ。1番聞いて参考になるだろ」



花宮の言葉にそれもそうか、となつめは納得する。正直こんなに頭の良い3人に自分の考えを話すのは、自分の頭の悪さを露呈してしまいそうで嫌なのだがそんな事は言ってられない。ここから出る為に力は出し惜しみしないつもりだ。



「もう考えてるとは思うんですけど…、多分、始まってすぐの段階でこれだけの武器が見つかるってことは、卒業生を卒業させるのは難しいことだ、と暗示してると思うんです。しかも多分、どんどん卒業生のレベルは上がっていくんでしょう」
「まぁ大抵のゲームはストーリーが進む毎に敵のレベルが上がっていくからな」
「はい。このゲームもその系統だとすると、換えの弾丸の多さ、サブアイテムの多さにも納得がいきます。手榴弾やグレネードランチャーなんてそうそう使わないもの」
「そこはこれから見つかる武器やその数によって対応していくとして……問題はどこに卒業生がいるか、です。俺達が2−6から出て会議室に辿り着くまで、全くと言っていいほど順調でした」



赤司の言葉に今吉はうーん……と唸る。卒業生が全く現れないのはなつめも気になっている所だった。肝心の卒業生が居なければゲームは成立しない。



「各階で伊月くんに調べてもらったんやけど、3F、2F、1Fとも、卒業生はおらんかったんや。おかしいと思わんか?奴さんは俺らを使うて卒業させようとしてんねんで?何で卒業生がおらんのやっちゅー話や」
「秀徳の高尾も居ない、って言ってたな……そうなると、このメモに書いてある“名札や腕章に反応する”ってのも正しいとは言えなくなってくる」



4人で顔を見合わせる。赤司達はきっとこれ以上の事を考えているのだろうが、言わないところを見るとまだ確証がないのだろう。あまりにも情報が少ないし、なつめにはこれ以上考えつかない。



「取り敢えず整理すると、この学校は3F建て。何かしらのイベントが発生すれば放送が入る。メモ書き通りだとすれば、セーフティールームは会議室と保健室、そして家庭科室に情報室。これはまだ仮説ですが、卒業生が反応するのは声や物音ではなく、俺達が付けている名札や腕章」
「今手元にある武器は、椅子と鉄パイプ4本、SR-25のスナイパーライフル、手榴弾8個にグレネードランチャー5個、それからコルトガバメント3丁」
「卒業生とはまだ1度しか接触しとらへんし、奴らがワシらに対抗する武器を持っとるかどうかはまだ分からん」
「あと、校則違反を犯すと心停止……、ってことは、危険を冒してまでやらなきゃいけないイベントがこれから発生するかもしれないってことだな」



ご馳走様でした、と置かれたカップを集めてシンク台に置く。サッと水洗いして元あった場所に戻しておく。は、と息をついてグッと体を伸ばす。背骨がボキボキと鳴った。



























「ねぇねぇレオ姉ー、何でこんなもん会議室に貼ってあんのー?」
「え?……あら……こんな所にこんな物、貼ってあったかしら……」



葉山と実渕が呟いた言葉に皆は振り向く。ほら、あれ。と葉山が指し示した場所には1枚のポスター状の大きさの紙が貼ってあった。そこには表のようなものが書いてあり、上から順にSHR、1限目、2限目、3限目、4限目、お昼休み、5限目、6限目、清掃、放課、と書いてある。1限目と1限目の間には10分休みが挟んであり、コレが時間割であるということは容易に分かる。しかし、会議室に貼ってあるにしては些か不釣り合いである。



「時間割表というか、タイムスケジュール?」
「これがあるという事は、本物の学校の様にチャイムを合図に行動しなければならない……という事でしょうか」
「せやなぁ……そうとも限らんけど…」



訳が分からんわ、と首を振る今吉。話の話題を見計らったかのように入った放送に、眉を寄せる花宮。同じような反応をしている者も少なからずいる。

































『授業開始5分前です。生徒の皆さんは、1時限目の準備をしましょう』



タイマーを見れば166:05:00。1限目は166:00:00から始まるということだろう。しかし、時間割表には何分間とは1文字も書いていない。授業時間が分からなければ校則違反生になりかねない。どうすれば良いのだろうか。なつめは隣にいた今吉に尋ねる。



「授業時間って普通に考えたら50分ですよね?」
「せやろな。てことは、特別教室を探索するには1回につき50分しかあらへんってことや」
「結構短いな……広い教室はテキパキ進めないと校則違反になりかねねぇ」



花宮の言う通りである。授業終了時間に気付かずに特別教室内を探索すれば、校則違反を犯すリスクが格段に上がる。取り敢えず皆に伝えておこう、と今吉が少し声を張り上げた。



「おーい。そのままでええから、ちょいとこっち注目してくれへんか」
「これからの事を話したいと思う。質問は後から受け付けるからまずは聞いてくれ」



赤司達が話し合って予想したこれからの事、それから注意点。武器の使い手に使い方。様々な事を的確に話していく赤司になつめは溜息をつく。どうしてこんなにも出来た後輩なのだろう……と。本当に安心できるありがたい存在だ、と苦笑した。



「それでは、3F探索は今吉班。2F探索が花宮班。1F探索は俺の班。笠松班と岡村班は待機班と共に会議室で待機……ということでお願いします。…………藤崎さん」
「……ん。それじゃあ、武器についてだけど……取り敢えず手榴弾とグレネードランチャーは保留。使わない。使うのは、椅子と鉄パイプ、コルトガバメント。これだけで凌げるかどうかは分からないけど、まだ何とかなる段階だと思うから」
「あの……ス、スイマセン」



恐る恐る、という感じで手を挙げた桜井。ん?と首を傾げてなつめは問う。



「どうしたの?桜井くん」
「えっと、その、ラ、ライフルは使わないのかな……って……ス、スイマセン!!!」
「あぁ……。…まぁスナイパーは扱いが面倒だし、当たらなければ荷物になるだけだからね。……それに、私より上手い人がいるから」



少し憂い顔で目を閉じたなつめに疑問を持つ者は少なくない。首を振って再度顔を上げたなつめ。



「独断と偏見、運動神経に体型で銃を使うメンバーを決めました。1回目の探索が終わったら訓練するから、今から名前を呼ばれる人は肝に銘じといて下さい。……赤司、氷室くん、花宮、森山さん、今吉さん、青峰、高尾くん、伊月、黄瀬」



分かった、と首を縦に振って返事をした彼らになつめは内心ホッとした。断られでもしたらどうしようと思ったのだ。そして、鉄パイプの振り分けを根武谷、笠松、青峰、岡村と割り振る。青峰はショットガン等の威力の強い銃が見つかるまで、鉄パイプで我慢してもらう。コルトガバメントを視野が広い高尾、赤司、そして花宮に渡す。簡単に扱い方とセーフティーの解除の仕方、マガジンの交換の仕方を説明する。数回の換えの弾丸と渡した。経験者がいない中で渡すのは若干不安だが、武器がないよりはマシである。



「じゃあ、探索は2限目までにして、3限目までに各班会議室に戻ってくるってことで、良いですか?」
「おん。あと、各班班長はこれ持ってきや。ストップウォッチ。授業開始と同時に押せば何分経ったか分かるやろ。時計は動いとらんし」
「助かります」
「今吉班と花宮班、赤司班は特別教室の探索、岡村班と笠松班は普通教室の探索に当たってください。放課後までは特別教室の探索、放課後からは普通教室の探索で、交代で休みましょう」



今吉からストップウォッチを受け取り、各自が思い思いに武器を取る。タイマーに目を向ければ1時限目が始まるまで残り10秒。なつめはホルダーからベレッタを取り出し、マガジンとセーフティーを確認した。右手にベレッタを持ち、左手は何時でももう1つのベレッタを持てるよう慣らしておく。


















































授業開始のチャイムと同時にストップウォッチのスタートボタンを押す。赤司と顔を見合わせ、頷いた。



「行こう」

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