赤司達はタイマーを見つめる。表示されている時間は167:03:24。なつめ達が教室を出て行ったのが丁度167:30:00頃。もうすぐ30分が経つ。最後になつめが残していった言葉が脳裏にちらつき、気が気ではなかった。



花宮は珍しくタイマーを見ながらソワソワして時折舌打ちをするし、今吉も何かを考え込んだまま。桃井はずっと不安そうに扉を見つめ、宮地は後輩2人がやはり心配なのか、おせェよ……と言いながら腕組みをしている。



1秒1秒刻々と時間が減っていき、もうすぐ167:00:00になる。もしかして、と最悪の可能性が頭に浮かび、それを振り払うように頭を振る。遅すぎる、様子を見に行こうか、と赤司が立ち上がった瞬間、廊下から足音が聞こえ、ガラッと扉が開いた。



「遅すぎんだよお前ら!轢くぞ!」
「俺達頑張ったんすよ宮地さん!!」
「虹村さん……!」
「緑間、虹村を床に寝かせて?なるべくそっと」



緑間が床に背負っていた虹村を下ろす。全員が虹村に近寄り、誰かが呟いた。



「……眠っ、てる……?」



その呟きになつめは首を振る。



「ううん。……そんな生易しいもんじゃない。停学処分の意味が分かったよ。……停学処分を受けると、アレスト(心停止)する」



皆の息を呑む音が聞こえる。そんなまさか、という表情で虹村を見つめる。確かに、虹村はピクリとも動かない。まるで眠っているようにも見える。



「……じゃあ、虹村さん死んじまったのか?」
「それは違うよ青峰。虹村は死んだわけじゃない。……脈はあるし、呼吸もしてる。……だけど、心臓だけが動いてない」
「…虹村さんは後12時間このままということか…」



赤司の言葉になつめは頷く。重苦しい空気が辺りを包み、沈黙が続いた。



その空気を壊すように、あ、と氷室が呟く。思い出したかのように自分が背負っていたバックをドスン、と机の上に置いた。そのバックを見て中身が分かったものは息を呑み、分からないものは首を傾げる。



「……収穫はあった。職員室のロッカーの中に、ライフルバックが置いてあったんだ」
「ライフル銃…。まさか、これを使って卒業生を?」
「多分、そのまさかだと思う。……しかもBB弾なんて生半可な物じゃない……SR-25、7.62×51mmNATO弾……セミオートマチックライフル。…何でこんなものが此処に?軍用狙撃銃よ?これ。しかも本物」



なつめはライフルバックからライフルを取り出す。なつめの説明を聞いた皆はまじまじとなつめの顔を見つめる。そんな視線に首を傾げるなつめ。赤司が皆を代表して聞く。



「藤崎さん、どうしてそんなに詳しいんですか?」
「え?あぁ……。…私、ミリオタなの。しかも重度の。あと、サバゲーも経験してるからこの手の銃は大体は扱えるよ」



思いがけない告白に皆は目を丸くする。普通のちょっと医療に精通したような女子高生が、まさかミリオタでサバゲー経験者だとは思わなかったからだ。まさに私の為にあるようなゲームだね、となつめは苦笑する。



「……ですが、心強いです」
「そう?そう言ってもらえると嬉しい。……ちなみにダメもとで聞くけどトイガンでも何でもいいから撃ったことある人は?」



手は挙がらない。流石に居ないか、となつめは苦笑する。ライフルは扱いが難しいから素人には無理。これは私が預かるよ、とライフルをしまった。うーん…、素人でも扱えるといえばやはり拳銃だろうか?ガバメントやマグナム…トカレフでも良い。S&WのM500があっても良いのだが、あれはダメだ。余り使いすぎると肩を痛める。スポーツ選手である彼らにそんなモノ持たせられない。悩みどころだ。まぁ、あればの話なのだが。あぁクソ、相方のベレッタが欲しい。両利きで小回りが効くからあれがあれば自由に動けるというのに…。今背負っているSR-25は重い。走れる気がしない。



「多分、ライフルが出てきたって事は他にも武器はあるんだと思う。ショットガンとかリボルバーとか、はたまた普通に拳銃とか……」
「てことは、探索は必要なんだな……です」



火神の発言にその通り、と頷く。黒子が偶には火神くんも良い事言いますね。としれっと言う。



「それから、これだけは頭に入れておいて下さい。これから先の行動で、もしチームがバラバラになってしまった場合、絶対に1人にはならない事。2人1組、もしくは3人1組で行動せよ。脱出ゲームはチーム行動が基本。1人になった時点でゲームオーバーと思え。……という事を」



なつめの真剣な表情に皆は頷く。そして、今吉が1枚の紙を手に取り、なつめに渡す。見ろ、という事なのだろう。



「赤司と花宮、ワシが考えたチームや。どや?これでええと思うか?」
「…はい。多分、大丈夫だと思います」
「あの、こんなのが落ちてたんですけど……」



桃井が今吉に紙切れの様なものを手渡す。そこに書いてある内容にオオ、と今吉は感嘆の声を上げる。ナイスや桃井!と言うほどだから、それほど良い内容なのだろう。































1Fの会議室、保健室、3Fの情報室
と家庭科室は鍵をかけなくても卒業生
は入ってこれないらしい。大抵の教室
は鍵をかければ卒業生は入ってこれな
い。しかし、困ったことに

































「てことは会議室あたりに身を置いたほうがいいんじゃないか?卒業生が入って来れないなら尚更」



笠松が言う。その通りだ。と皆は思うが、それ以上にメモの続きが気になる。しかし、困ったことに……その続きは何だよ!と思うのは当たり前だろう。



「だれが書き残したか分かんねぇけど、不自然に破かれてて読めねぇ……続き超気になるじゃん!!」
「まぁ困ったことに……だから悪い文章が続くのは明確なんだけどな」



はぁ、と肩を落とす。パンパン、と赤司が手を数回鳴らした。皆が赤司に注目する。



「取り敢えず、1Fの会議室に向かいましょう。会議室というからには、この教室よりは広いはず。待機班から出発して、10分毎に次の探索班が出発。それでいいですか?」



それぞれが頷いたり返事をしたりと、各々の反応を示す。どうやら異論は無いようだ。待機班には、書記である桃井と未淵、そして膝を故障している木吉。状況に応じて待機したり探索したりする氷室は、今回は待機班として行動。気をつけて、と彼等を見送る。



なつめは陽泉の主将の岡村の所へ向かう。岡村の班は緑間に高尾、黒子に火神だ。鷹の目を持つ視野の広い高尾と、黒子がバテた時のために抱える役として火神。このメンバーを纏めるために岡村が投入されたというわけだ。一癖も二癖もあるメンバーなので、3年が良いだろう、となったらしい。



「岡村さん、黒子と火神を宜しくお願いします」
「癖のある部員は紫原で慣れとるからな。火神くんあたりならまだ良い方じゃ」
「ちょっとアゴリラーどういう意味ー?」
「アゴリラ言うな!!!ワシ主将!!!」
「高尾くんと緑間も気をつけて」



苦笑しながら、なつめは再度お願いします、と言う。赤司の藤崎さん行きましょう、という声に返事をして、日向と伊月に先行くね、と伝える。気をつけろ、と声が掛かり、笑って返事をした。



なつめの班は、赤司と紫原、それから虹村だ。虹村は今、紫原に背負われている。なつめはライフルバックを背負い、教室を出た。自分の前を歩く赤司にありがとう、と声を掛ければ綺麗な微笑みが返ってくる。これだけ頼りになる後輩は貴重だな、と心の片隅で思ったのだった。

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