「奇妙な話ですが、医者に診せた所、切除は無理のようで。一生、この姿のままだろうと」
「だっからウチで引き取ればいいじゃない!パパの人でなし!!!」
「ウチは家庭的に問題があるだろうが!!」
「ママが出てったのはパパのせいでしょ!!」
「………………親父のせいでオレの人生メチャクチャだ。……こんなおデコした奴、誰もいねェもん」



















「おデコ、お顔洗う時邪魔じゃない?」
「はぁ?」
「ホラ、朝はお顔洗うでしょう?こうやって。ちゃんと洗えるの?」
「あ、当たり前だろ!バカにすんな!」
「そう。……じゃあ、何も問題ないわね」
「!」










大丈夫よティモシー










「先生!?どうしたの、院長先生……?」



地下に行くために階段を降りてきたリンク達。しかし、廊下に子供たちと佇んでいる唯ならぬ様子の院長先生に、違和感を感じる。来てはダメよ、と言った彼女の顔は、最早人間とは言い難かった。人形のような風貌になってしまった彼女達は、崩れるようにカシャンと音を立てて床に倒れていく。



「い、院長せんせ…。先生が…人形みたいになってる…」
「院長先生!みんな……っ!」
「!まてっ!」



思わず飛び出したエミリア。リンクが制止するが、エミリアは突然銃で撃たれてしまう。乾いた発砲音が二度ほど響いたと思えば、更に銃弾が飛んでくる。エミリアに駆け寄ろうとしたティモシーだったが、それは叶わなかった。銃を持った何者かに抱えられる。

新たな銃弾が降ってくる前に倒れるエミリアを支えたリンクは、直ぐさま壁に隠れる。エミリアの安否を心配するが、それは杞憂に終わった。彼女には、弾丸は一つも通っていなかった。自分でも驚いているのか、エミリアは目を丸くしている。



「え、あ、私……撃たれたはずじゃ……!」
「……奈楠ですね」
「奈、奈楠さん?」
「体が薄く光っているでしょう。それは彼女の能力。この光が体を覆っている間は、傷一つ付かない」
「……じゃあ、光が消えた時は」
「奈楠の身に何かが起こった時です」



それにしても、レベル4以外が入り込んでいるとは迂闊だった。あれだけの数がいればレベル4しか居ないだろうと錯覚するのも致し方ない。しかし、今のは唯の銃撃。AKUMAではないことが容易に分かる。チラ、と壁から覗けば驚くべき光景があった。思わずエミリアは叫ぶ。ティモシーを抱えて拳銃を構えたシスターが、そこには居た。



「!!?シスター!?」
「おやエミリア、アンタ生きてたのかい?確かに弾は命中したと思ったんだけどねぇ」
「!エミリア!!!……シスター、アンタ何を…!」
「皮肉じゃないか泥棒小僧。自分が盗られる側に回るなんてねぇ。ふふ、ちまちまAKUMAの“材料”提供すんのとはケタ違いの報酬だよ。こんなお宝が近くにいたなんて、教えに来てくれたエクソシストに感謝しなくちゃねぇ」
「テ…………メェ…………!!」
「なるほど……妙に首尾が良いと思ったら、ブローカーが混ざってましたか」



「ブローカー」。金銭と引き換えに「情報」とAKUMAの「材料」となる人間を提供する存在。千年伯爵と取引する人間。



「……自らすすんで悪魔に飼われた罪人。……“加護対象外”ですね」
「加護?はっ、知るか!アンタ達が勝手に伯爵と戦り合ってるだけだ……」





「ろ」





突如、シスターの体はバキンという音を立ててあらぬ方向に曲がる。そうなったことで開放されたティモシーは、ドサ、と床に落ちる。しかし、ティモシーの体は浮いた。新たに現れたAKUMAによって、捕らえられる。



「!!」
「なっなに……?体が動かな……っ」



「レベル2ダークマター。この目が6秒間見つめたものは肉が硬化し、生きたまま人形になる」
「!?」
「肉が硬まっては動けない。硬いものは弾力性がなくてモロい。さて問題です。こうして軽く押すだけでどうなるでしょう」
「やぁぁっ痛い痛いッやめてぇぇぇ!!」



言いながらシスターの顔を踏み付けるレベル2。ミシミシと言う音は徐々に広がっていき、大きくなっていく。



「私は味方なのよやめてっ!!」
「…味方?味方ならボクらのご飯になってよ」



グッと力を込めて押せば、シスターの顔はバキン、とあっけなく割れた。ごっちー♪と言って上げたレベル2の足には、グショ……と血がべっとり付いていた。目の前でシスターが殺されたティモシーは、ガチガチと歯を鳴らして震えていた。



「イノセンス回収〜。さぁ行くぞ」
「ゃ、やだっ!やだぁっ!!」
「Ms.ガルマー、此処にいなさい」
「え、あ、ちょっと!」
「(6秒か……この廊下の範囲で奴の視界を避けていくのは困難だが……レベル2を1体なら何とか……)その子を渡すわけにはいきません!!」



そう言って飛び出したリンクは目を丸くする。てっきりAKUMAはレベル2の1体だけかと思っていたが、どうやら違うようだった。



「!!レベル3……!?」
「黒服でもねェのがッ、死んじゃうぜェ!」



そう言って飛び出したリンクを呆気なく壁に撃ち込むレベル3。死に急ぎ野郎が!と笑いながら蹴り飛ばした。



「「ぎゃははははは!!」」
「実は3体来てマース!」
「敵うと思ってんの?」
「あんちゃんッ!?ッ放せぇバカヤロー!!」



ティモシーが叫んだ瞬間、レベル3のボディが歪む。体を反転させて勢いよくレベル3を蹴り飛ばしたのはリンクだった。流石「鴉」というところだろうか。並大抵の戦闘能力ではない。奈楠のプロテクションのお陰もあるのだろう。さほど傷を負ってはいなかった。



「黒服ではないが……“黒い羽”なら持っています」



レベル2がじろりとリンクを見つめ、カウントダウンが始まった。







「破壊は出来んが、お前達を退かす事は出来る」



袖口から術札を取り出し、握りつぶす。



「(急げ、時間が無い!)術以って力とし、技以って解放し、心以って拳と成す!」
「この野郎がッ!」
「ワワッ、こっち来る!!」











飛び数歩でレベル2に近づき、その間にレベル3に術札を貼る。貼った札には火と書いてある。







「息を止めなさいティモシー!!」
「ムグッ!」
「「「!?」」」







秘術“黒羽焔気”!!



「「「!!」」」



リンクが放った爆炎の術は壁をも粉砕し、辺りは煙に包まれる。孤児院の外ではあるが結界内でレベル4と応戦していたアレン達はその音の方向に首を向ける。アレンはレベル4に「退魔ノ剣」越しに足で踏みつけられていたが、目を見開く。



「!?なんだ……っ、カハッ」
「あくまはわたしたちれべる4だけではないよ」
「!!なに!?」
「だいじょうぶかなぁ?」



レベル4でないとすれば、奈楠ではない。孤児院の子供たちやティモシーにエミリア、そしてリンクだ。アレンは無線越しにリンクに叫ぶ。



「リンク!!聞こえますかリンク!返事してください!!リンク!!!」



ティモシーは口からティムを吐き出す。微かに聞こえたアレンの緊迫した声に気付いて、自分の前に立つリンクを見上げた。



ガシャンと音を立てて崩れ落ちたリンクは、人形と化していた。ティモシーは驚きのあまりリンクの肩を揺らす。



「!!ホクロのあんちゃん!!!」
「なんて奴だエクソシストでもないのに」
「6秒の壁は超えられなかったがねぇ」
「「「砕け死ね」」」























人形と化した黒羽

(やめてくれと願った所で、)

(聞き入れてくれる筈も無かったのだ。)
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