「今のうちに地下室へ逃げなさい!」



リンクの叫ぶ声でアレンは我に返った。中々動こうとしなかったアレンに、リンクはため息をついた。



「あの状況では、奈楠は正しい判断をしましたよ。レベル4は、彼女に任せた方が良い。こちらには子供達という人質がいるのです」
「それは……分かってるけど……っ、そ、そうだリンク!僕が方舟のゲートを作るから、みんなをそこへ!」
「ダメですウォーカー。“奏者”としてのキミには制限が定められたのを忘れたのですか!」
「!」



一刀両断されたアレンは、息を呑む。この非常事態にまで規則を守らなければならないのかと思うと憤らずにはいられなかった。いつもより沸点が低いのは、きっと奈楠にあんなことを言われたからだろうと思った。奈楠を守ることは自分にとって当たり前の事なのに、今更何を落ち込んでいるのか、と馬鹿馬鹿しくなった。それでも、奈楠を守りたかった。それだけだった。



「“奏者の能力の使用は中央庁と教団本部が認証した場合のみ許可される”。キミの独断でゲートを作ることは反逆行為とみなされます」
「バッカじゃないの、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!女性と子供をこんな所に置いとけないし、狙われてるティモシーも子供なんですよ!!?」
「バカらしかろうが規則は規則です!自分の立場をこれ以上悪くしたいのですか!?せっかく奈楠がキミを守ろうと必死になっているのに!?」
「!?奈楠が……?」



アレンが奈楠の名前を復唱すれば、リンクはしまった、という風に口を抑える。奈楠は自分の知らない所で何をしているのだろう、と少し不安になった。だが、今は緊急事態だ。後でリンクからゆっくり話を聞くとして、まずはゲートを作ろうと頭に「詩」を思い浮かべた。



「ちょっと待って、何でオレ狙われんの!?あの人形は何!!?」
「!」



話を聞いていたらしいティモシーが、リンクの腕を掴み問いかける。後ろではエミリアが不安そうにティモシーの手を握っていた。



「キミの額の玉がイノセンスかもしれないからです。イノセンスは“AKUMA”と呼ばれる兵器を破壊できる唯一の物質。だから奴らは、それがエクソシストの手に渡るのを阻止しようとする」
「……ウソだろ……」
「!?どうしたんです、」
「ゲートが……作れない……!?」
























レベル4の光線をくらい、直撃したはずだった。しかし、自分の体を全く襲ってこない衝撃に、神田は目を丸くした。あぁ、そうか。と自分の体を見て思った。いつの間に発動させたのか、プロテクションで、覆われていた。相変わらずだな、と頭の中に浮かんだ女にフ、と笑みを浮かべた。



「毎度毎度、守られてばっかりじゃねェか……」



彼女を護ると決めたはずなのに、ふと気付けばいつの間にか自分が護られているのだ。敵わないな、と思うのはいつものことだった。

正直、自分も奈楠をレベル4数十体の中に一人で戦わせるのは気が引けた。いくら強いと言っても、「人」には限界があるからだ。「セカンド」である自分には治癒能力があるから、いくら傷ついても構わない。しかし、彼女はどうだ?「治癒の祈り」のキズを治す癒しの力は適合者本人には使えない。「プロテクション」を使えばいいのだろうが、奈楠は頑として自分には使おうとしない。もし奈楠が致命傷を負ってしまったら、と考えて、体が震えた。自分らしくもない、と六幻を構え直した。











再度レベル4に吹き飛ばされ、神田とマリは後方に居るアレンの元に飛んだ。リンクはエミリアとティモシーを抱き抱え、地下室へと向かう。アレンはティムとリィムにリンク達を助けるように促す。



「やはり……手強い!」
「ちっ」
「くそっ!」
「そうしゃのちから、のろいのひだりめ」



突然発したレベル4の言葉にアレンは反応する。 集中してレベル4を見るが、やはり左眼は全く反応しなかった。思わず唇を噛む。



「……っ、(AKUMAがこんなに近くにいても左眼が反応しないなんて……!)」
「きゃはははは!われわれがいつまでもおくれをとるとおもったか!あれん・うぉーかぁ!」



拳を握りパワーを放出するレベル4に、3人はイノセンスを構えた。一撃を繰り出そうとした瞬間に無線から聞こえた微かなノイズに、3人は少し、頬を緩めた。あぁ、これだから彼女は強いのだ、と思わずにはいられなかった。























私は、貴方達を、信じてる。



























「援護する!行け!!」
「「ぶっ壊す!!」」
「ぶっころす!!」






















当たり前の事だった

(僕も/俺も/私も、)

(奈楠を信じてる。)
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