「さぁ、ぬしらの為の特製の術じゃぞ本多奈楠、アレン・ウォーカー。この結界の内では左目も耳も奏者の能力も、術も働かん。いくらぬしが導師の端くれと言えど、内からでは解けまい?本多奈楠…」














突然の爆発音と衝撃に、孤児院内の者は皆、あわてふためいた。そんな中、エミリアとティモシーは、自分達を守るように抱きしめる暖かい存在に気づく。顔を上げれば、自分達を庇うように覆いかぶさっていた奈楠の姿があった。



『…大、丈夫?ケガは、無い……?』
「え、えぇ…あ、ありませんけど」
「姉ちゃん、院長先生達は?」
『無事よ。ボルグを張ったから』



そう言うと同時に、奈楠はプロテクションを孤児院内の全員に発動させた。レベルは最大の4。何が起きるか、分からない。ふと感じた殺気に、奈楠は無言で“紅”を発動させた。ピアスがいきなり刀に変わったことにエミリアとティモシーは驚く。ティモシーは、奈楠の肩に乗っているリィムに目を向ける。興味を持ったらしいティモシーに苦笑して、奈楠はティモシーの手のひらにリィムを乗せた。



『リィムっていうの。仲良くしてね』
「……あれは、天使……?」



院長先生の呟きに、近くにいたアレンと奈楠はゆっくりとそちらに目を向ける。そこには、宙に浮かんでいる何十体ものレベル4の姿。院長先生の呟きが耳に入ったのか、レベル4は不敵に笑いながら言った。



「てんしではない」
『あれはAKUMAです。私達の、敵』



奈楠はゆっくりと立ち上がった。レベル4数十体に、こちらはエクソシストが4人。子供達という保護対象がいる中で、しかも孤児院内という狭い空間で思い切り暴れられる訳はない。かと言って、アレンや神田、マリの3人では、せいぜいレベル4一体が限度だろう。決して馬鹿にしている訳ではないが、彼らはまだ、弱い。残りのレベル4はこちらに引きつけるとして…………と、考えを巡らせていれば、突如聞こえた子供の泣き声。



「えーん、えーん!」
「怖いよぉ、エミリアぁ…」
「お姉ちゃぁああぁん」
「いんちょおせんせぇー!」
「!子供が……っ」



アレンが飛び出していく前に、奈楠は飛び出した。“跳ぶ人”で一気に距離を詰める。子供達に狙いを定め攻撃しようとするレベル4の頭に全体重を乗せ、思い切り床に打ちのめした。



「出やがったなレベル4!」
『アンタ達の相手は私よ、レベル4!』



ふと気付けば神田も自分と共にレベル4を蹴り飛ばしていたようで。レベル4が吹き飛ばされた先にはマリが待機しており、“嘆きの旋律”でレベル4の体を縛って思い切り壁に打ち付けていた。出遅れたアレンは、“退魔ノ剣”を発動させてこちらに走ってきた。



「奈楠!大丈夫ですか!?」
『大丈夫。…それにしても、これだけレベル4がいると……厄介なことになったね……』
「あぁ……面倒だ」
『取り敢えず、ここからは別行動よ。アレンと神田、そしてマリは今のレベル4一体を集中して破壊して。残りのレベル4は、全部私が破壊するから』
「!?何言ってるんですか、一人じゃ危険です!僕も手伝います!!」
「分かった。死ぬんじゃねェぞ」
「ちょ、神田!!?」




二つ返事をしてレベル4へと向かった神田に、アレンは声を上げた。アレンが反論するだろうとは思っていた。彼の性格上、分かっていたことだった。頑として動こうとしないアレンに、
奈楠は一つため息をついて、告げた。



『ダメ。アレンは神田達と行動よ』
「冗談じゃないです!奈楠!」
『今議論してても時間の無駄。納得してもらえないみたいだし、敢えて言わせてもらうけど』



奈楠はアレンを少しだけ睨みつける。



『こんなこと言いたくないけど、アレンは私より強い訳?レベル4を何体も一度に相手出来るって、断言できる!?』
「………………ッ!そ、それは……ッ」
『私はアレン達がちゃんと強いのを知ってる。馬鹿にしてる訳じゃない。アレンは私を心配してくれてるんでしょう?でもね、ここは戦場なの』
「それはそうだけど……っ」
『アレン達には1体で精一杯でしょう』
「……ッ」
『アレンがこちらに来ることで、神田達がレベル4を倒せなくなるかもしれない』
「そ、それは奈楠だって同じでしょう!?」
『かもね。だけど、貴方達よりは強いのよ。場数も踏んでるし、イノセンスの数も多いわ。そうなれば必然的に、多い数の敵を相手するのは私が適任なのよ』
「でも、奈楠……!」



中々了承しないアレンに痺れを切らしたのか、奈楠は声を張り上げた。突然の事にアレンはビク、と肩を揺らす。



『いい加減にしなさいアレン・ウォーカー!』
「ッ、」
『元帥命令よ。まずは目の前の1体から。神田達と一緒に自分が出来ることをしなさい。こうしてる間に、子供達が危険に晒されるんだから!』
「!!!」



奈楠はアレンから背を向けて駆け出した。アレンは思わず奈楠の背中に手を伸ばすが、それが届くはずもなく。行き場を失ったその手は、宙をさまよった。言い返す事など出来なかった。奈楠が正論だったからだった。強くなりたい、と思わずにはいられなかった。










出来ることなら、アレンにあんなことを言いたくはなかった。でも、言い合っている内に子供達が危険に晒されていることを考えると、ああするしかなかったのだ、と自分に言い聞かせた。正直な所、自分がレベル4を何十体も倒せるかどうかは、分からなかった。でも、出来ると思った。そう思ったからこそ、あんな提案をした。さっきの話を、神田とマリも聞いていたはずだ。小さくゴメン、と呟いて、奈楠はレベル4の前に立った。



『私は、貴方達を、信じてる』



かかってきなさい、AKUMA共。






























Lv.4、再び

(何が、崩れた音がした)
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