「ティモシーを黒の教団へ?」
『ティモシーの能力は、額の玉の影響によるものかもしれないんです。これはあくまで推測ですが』
「我々は訳あって“イノセンス”と呼ばれる物質を探していまして。額の玉がそれかどうか調べさせて頂きたいのです。身の安全はお約束します。調べて違うと分かればすぐにお返し致しますので……」



マリが、ティモシーを黒の教団で調べさせてほしいと提案する。イノセンスは、黒の教団が喉から手が出るほど欲しがっているものだ。千年伯爵とノアも、それを壊さんとして日夜世界中を飛び回っている。ティモシーは今のところその額の玉を自分の意識で操っているが、いつ何時暴走するか分からない。それを考えれば黒の教団で預かるというのは最善な手なのだろう。



【主様、やはりこの少年の額の玉…イノセンスの様です】
『(紅……、分かるの?)』
【はい。額からイノセンスの気配がします】



突如頭の中で響いた声に奈楠は声に出さずに応答する。紅は、ティモシーの額の玉がイノセンスかどうか確認してきたらしい。そっか、と言って改めてティモシーを見つめた。訳もわからず体内に入れられた物が、イノセンスとは……。とんだ運命に巻き込まれたものだな、と少しだけ思ってしまう。父親がティモシーの体に盗品を飲み込ませなければ、いや、それ以前に盗みを働こうとしなければ、こんなことにはならなかったのだ。マリの言葉を聞いたエミリアがそれを遮り、それに少しだけティモシーが反応した。




「ち、ちょっとまって!それって……、もしイノセンスだったら、この子をどうするつもり?」
「ここには置いとけない。そのガキは黒の教団で引き取って、エクソシストになってもらう」



神田が言い放った言葉にティモシーは過剰に反応した。突然暴れだしたティモシーに、奈楠はティモシーの体に回していた腕に少しだけ力を込めた。



「嫌だ!勝手にオレの事決めんな!!お前ら親父と同じだッ!オレを物みたいに……!オレは……、オレはここに居たいんだ!死んでも行くもんか!!」



























「知るか。引き摺ってでも連れてい…「申し訳ないコイツ口下手で……!!」
「ぴぇぇえええぇえぇええぇ!!」
「力尽くはいけませんわ」
「そうよ貴方人の心無いの!!?」
「こりゃ一旦コムイさんの指示仰いだ方がいいな……」



人でなし発動した神田の口を、マリは瞬時に抑えて弁解する。泣き出したティモシーの涙を拭きながら奈楠は告げた。



『まだティモシーの未来が決まった訳じゃない。誰もティモシーの未来を決めてないよ。……自分の未来は、自分で決めるものだもの』



神田が悪いことしたわね、ごめんね。と優しく微笑んで宥める奈楠に、ティモシーは軽く頷く。

その言葉を聞いたアレンは、少しだけ目を伏せた。やはり、奈楠が師匠とマナと被るのだ。彼女の言葉の一つ一つが、自分に向けて言われているような気がしてならないのだ。そして、その言葉を聞く度に、自分の心が溶かされていくのを感じるのだ。あぁ、奈楠が、彼女が自分の道しるべになってくれているのだと、今更ながらに気付いたアレンだった。



「(自分で決める…………か)」











不意に周りの明るさが無くなる。窓の外を見れば、不自然な暗闇が孤児院を包んでいた。まるで、上も下も右も左も分からないような闇がそこにはあった。



「あら外が……?」
「まだ昼よねェ?」
『ッ、しまった…!!(忘れてた、くっそ……!!)』
「!!周りの街が……!?」
「消えた……!?」
『違う!私達が結界に閉じ込められたのよ!』
「AKUMA……!?(左眼には何の反応も無いのに)」



アレンの左眼に反応が無いことを確認した奈楠は、小さく舌打ちをする。最悪の事態を想定してしまった自分がいた。何でこうも早く思い出せないのだろう。さっさと思い出していれば早急にエミリア達を避難させることも出来たはずだ。そう考えて奥歯を噛み締めた。



『アレンの左眼が反応しないってことは、やっぱり私の耳も駄目ってことか……!』





























「ふふふ。のろいのひだりめと、あなたのみみはつかえませんよ。……われわれがいつまでもおくれをとるわけないでしょう」



孤児院の上空にはレベル4数十体。終わりの見えない戦いが始まろうとしていた。























呪いが効かない

(進化した奴らに、果たして立ち向かえるのか)
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