「ティモシーが人様の体で泥棒を?」



無事に孤児院の中へと通された奈楠達は、応接間に通される。元通りに入れ替わったティモシーは、奈楠の膝の上に座っていた。それに疑問を覚えたアレンは問いかける。



「……なんでティモシーは奈楠の膝の上なんです?」
『私が子供が好きだから』



それに、これの方が逃げ出しにくいでしょーとあっけらかんとする奈楠。ティモシーは大人しく抱き締められている。



「ティモシーくんは、他者の体に自身の意識を憑依させて操る能力を持っているようです」
「「あの……、本気で仰ってるんですか?」」
『まぁ、すぐに信じられる話ではないですよね』
「本人がそう言ってんだ」



しれっとそう言った神田にエミリアは少しムカッとしたのか、怒った口調で刺々しく言う。それに対して何食わぬ顔で対応する神田の腕を奈楠はスパン!と叩く。



「言ってるって……、刃物突きつけて言わせたんでしょ!黒の教団だかエクソシストだか知らないけど子供にあんなことして謝罪もないわけ!」
「ガキが素直に言うこと聞いてりゃあんな真似しねェよ」
『はーいバ神田、1回黙ろっかぁ』
「ってーな奈楠……、」
『少しは反省しなさい!』
「…………………………悪かったな」
『分かってはいるけど何なのその間は』
「分かんなら聞くなよ」



素直に謝罪の言葉を口にした神田を、アレンは呆然として見つめる。神田が謝罪した事が、そんなに意外だったようだ。そんな視線に気付いた神田は盛大に舌打ちをする。マリが苦笑した。



「申し訳ないコイツ口下手で…それは本当謝ります」
『ごめんなさい院長先生、Ms.エミリア、ティモシー。危害を加えるつもりは全く無いんです』
「…頭を上げてください奈楠さん。エミリア、貴女だって奈楠さんの連れの方の額を割ったんだからお互い様でしょ」
「う……、すみません」
『大丈夫ですよ。それにしても、あの蹴りは素晴らしかったです。惚れました』
「!?な、なななにを……!」



アレンは自分がこの孤児院に入った時から感じている視線に気づいていた。ふと扉の方を見れば、ずっとこちらを見ている1人のシスターの姿。ただならぬ雰囲気のシスターに、アレンは訝しげに眉を顰める。シスターが扉から出て行ったのと入れ替わりに入ってきた子供達に、アレンはまぁいいか、とその事を頭の片隅に追いやったのだった。

奈楠は、不意に団服の裾をくんっと引っ張られた方向を見る。そこには、ほんの4、5歳程の子供達がいた。それに気付いたエミリアが慌てて子供達に退室を促す。



「あっこら!入ってきちゃ駄目だって言ったでしょ」
『ふふ、大丈夫ですよMs.エミリア』
「ねー、おねーちゃん遊ぼー」
「ティモシーばっかりずるいよー!」
『ごめんね。お姉ちゃん今お仕事してるから、また後でね?いい子で待っててくれる?』
「「「「うん!!」」」」



元気よく返事した子供達を見て奈楠は優しげに目を細め、いい子ね。と言ってそれぞれの頭を撫でる。頭を撫でられた子供たちは頬を緩め、応接間から出て行った。



「……なんか、すごいなつかれてますね、奈楠」
「なんと言うか、流石奈楠ですね」
『やっぱり子供はかわいいなぁ』



アレンとリンクに口々に言われれば奈楠の頬はだらしなく緩む。院長先生やエミリアも、ほんの数分で子供達が奈楠に気を許したことを驚いているようだ。



「院長、ティモシーくんの額の玉についてはご存知ですか」
「ええ。…この子の父親は、昔ガルマー警部が逮捕した窃盗犯なんですの。ある時彼は、罪を隠す為に幼いティモシーに盗品を飲み込ませました。父親の刑が執行されて、警部がティモシーをここに連れてきた時にはこの子はもう今の姿になっていて……」
「(可能性アリだな)」
「(あぁ…………)」



少しだけ不安そうに奈楠の団服を掴むティモシー。それに気付いた奈楠は、その手をそっと包み込む。再度安心させるように、ティモシーに向かって優しく微笑んだ。ティモシーは、自分に向けられたその優しい笑顔に戸惑いを感じるばかりだった。






















「はい。白髪と長い黒髪の少年と、大柄の男です。…………それに、“例の”少女も。…………はい、……はい。…………………ありがとうございます伯爵……………………」





































見つけたイノセンス

(自分に向けられるこの笑顔を、)

(受け取っていいのだろうか、と悩む自分がいた)
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