教団に来て数週間が過ぎた。奈楠はと言えば、任務が入ることはなく、毎日を教団内で過ごしていた。団服が出来るまでの間は待機らしい。


……実はもう、団服は当の昔に出来上がっているのではないか…と、思ったりもするのだ。まだ自分を警戒しているが故、任務を与えないのではないか…と。考えすぎか、と思わず自嘲する。…それでも、不安なのだ。AKUMAを倒してこそ、自分がこの世界に来た意味があると思わずにはいられなかった。


そろそろイノセンスを使った鍛錬でもしてみるか、と思って自室を出る。相手を頼もうにも神田は任務に行っているし、リナリー相手だと、本気で戦える自信が無い。無意識のうちに手加減をしそうなのだ。他のエクソシストは皆出払っているらしいし、ここは自分一人でやるか……と、諦めた。




教団内にある森に出て、“跳ぶ人”を発動させる。跳ぶようにして地面を駆け抜け、教団から離れる。ある程度まで来たところで、動かす足を止めた。ふと、漫画の中で神田がやっていた鍛錬を思い出し、やってみようと“紅”を発動させた。









『っあー、やっぱり体力足りないや…』


数時間にも及ぶ鍛錬を終え、教団へと戻る道すがら、奈楠は思わずため息をついた。毎日走り込みを続け、体力はついた方だと思っていたのだが、なかなかそうはいかないらしかった。

これからは毎日頑張ろう、と気合いを入れる。



「あっ!奈楠いた!!」
『?』


背後から大声で名前を呼ばれ、なんだろうと振り返れば、そこには愛しい親友・リナリーの姿。彼女は奈楠の元へ走ってやってくる。


「どこいってたの?ずいぶん探したんだよ?」
『ごめん…、森に行ってたの』
「鍛錬?今度は私もさそって!」


奈楠と手合わせしてみたかったの!と笑うリナリーに、もちろん!と返す。そうすれば、更に可愛らしい笑顔が返ってくるのだから断れるはずもない。


『そういえば、どうかしたの?探してたって…』
「あ、そうだった!」


奈楠の団服がね、出来たんだよ!


リナリーの言葉に思わず頬が緩む。早く行こう!と言うリナリーに手を引かれ、奈楠は科学班フロアに向かった。









「「「じゃーーーーーん!!!」」」
『わ、凄い……!』


出来上がった団服を自慢げに見せるジョニー達。奈楠には、その団服がとても輝いて見えていた。やっと教団の一員になれた気がして、嬉しかったのだろう。奈楠の目も、輝いていた。


「奈楠!早く着てみてよ!」
『うん…!』


科学班のメンバーに後ろを向いてもらい、団服に手を通す。さすがジョニーと言ったところだろうか、団服はキツすぎず緩すぎず、とてもピッタリだった。最後にパンプスを履けば、出来上がりだ。胸のローズクロスがキラリ、と光る。


「わ、奈楠凄い似合うよ!」
「かっこいいな!」
『…えへへ、ありがとう…』


皆から褒められ、少し照れたように笑う奈楠に、その場にいた全員の空気と頬が緩む。


「これでやっと、奈楠といっしょに任務に行けるね!楽しみ!」
『ふふ、よろしくリナリー!』
「こんなに喜んでもらえると、作ったかいがある!」
「ちなみに団服の上に羽織るコートも作ってみた!」
『わ……ッ、本当にありがとう…!』


コートを受け取り、満面の笑みでお礼を言う。なんだか少し、教団の皆に近付いた気がした。それがとても、嬉しかった。







アンドラダイトの推理

(これで彼らの為に戦える、と)

(そう思った心に偽りは無かった)
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