「奈楠!買い物行こう!!」


愛しい親友に満面の笑みで誘われて、断れるだろうか。いや、断れる筈がない。




朝、目が覚めたと思ったら目の前には凄く可愛らしい笑顔を浮かべたリナリーの顔があり。取り敢えずおはよう、と挨拶をすれば、これまた可愛い声でおはよう!と返ってくる。どうしてここにいるの?と聞けば、冒頭に戻るわけだ。


食堂でリナリーと朝食を食べ終えれば、2人は指令室にいるコムイの元へと向かった。外出許可を得る為だ。シスコンのコムイが許してくれるか?と思いつつも、淡い希望を抱きながら指令室に入った。






「ダメです!!」
「どうして!?奈楠だって必要な物があるの!」
「2人だけでなんてぜーったい許しません!お兄ちゃんも着いてく!!!」
「兄さんはおしごとでしょ!?」
「ボクが行かないなら行っちゃダメ!!」
「奈楠が困ってもいいって言うの!?」
「そういう訳じゃないけど……!」
「なら、いいじゃない!!」
『……おーい、もしもーし』


先程から、ずっとこの調子である。コムイが一緒に行く!と駄々を捏ねて聞かないのだ。班長〜、と助けを求めるように視線を投げ掛ければ、仕方ないな、とリーバーは立ち上がった。


「室長、行かせてやったらいいじゃないですか」
「だってリーバーくん!!」
「買い物っつっても、教団から街はそんなに離れてないんだし、いざとなったら2人共、“黒い靴”と“跳ぶ人”があるじゃないっスか」
「で、でも……」
「心配なら、ゴーレム持って行かせればいいでしょう?あんまりしつこいと、リナリーに嫌われるっスよ?」
「!!!!リ、リナリー…………」


コムイは涙目でリナリーを見た。リナリーは頬を膨らませて拗ねたようにしてコムイを見ている。そんなリナリーを可愛いなぁ……と思いながら奈楠は見つめていた。


「早く帰ってくるんだよ!?何かあったら直ぐに連絡するんだよ!?知らない人に着いてっちゃ駄目だからね!?それからそれから……」
「じゃあ、2人で行ってもいいの!?」
「う、うん……。いってらっしゃい」
「やったぁ!!兄さんありがとう!!」


満面の笑みを向けられたコムイは、とてつもなくデレデレしていた。先程までの喧嘩していた雰囲気はどこへ行ったのやら、リナリーとコムイはニコニコしていた。そんな2人を呆れたように奈楠とリーバーは見つめた。


『ありがとう、班長……助かった……』
「大変だな、奈楠も。気をつけて行ってこいよ」
『!…うん!行ってきます』


奈楠、早く行こう!と笑顔のリナリーに手を引かれ、指令室を出ようとする。あ、ちょっと待って!とコムイに声を掛けられ、振り返る。ゴソゴソと何かを探し出したらしいコムイは、奈楠に封筒を手渡す。


「これ、軍資金。この範囲だったら、好きなように買っていいからね!あ、ちゃんと領収書は貰ってきてくれるかい?黒の教団、でね!」
『…え!?いや、そんな……』


慌てて封筒を返そうとするも、コムイは当たり前のように受け取らなかった。


「いいんだよ、これはボク達からの餞別。奈楠ちゃんが入団してくれたことに対しての、ね!」


ニコニコとしているコムイに、なんだか泣きそうになった。それに気付いたコムイは優しく頭を撫でて、


「心配しなくても、キミはもう僕たちの家族だ。……気をつけて行ってらっしゃい」
『……行ってきます!』


奈楠はニッコリと笑って、リナリーと共に街へ繰り出した。






その後、街で楽しそうに買い物をしている様子の2人の映像を見て、コムイが行きたかった……と、メソメソしていたらしい。


リナリーと買い物へ行くようになり、殺風景だった部屋に物が増えた。リナリーが選んだ物や自分で選んだ物、それらを見ては、頬を緩ませるのだった。


団服が出来るまで、もう少しらしい。その間に着る服も買うことができた。リナリーはセンスが良かったので、自分に似合う服を沢山選んでくれた。流石に全部買うわけにもいかず、選ぶのは大変だった。久しぶりに、女の子らしいことをした、と思った。


結論:シスコンはかなりしつこかった。
あと、リナリー可愛い。

まるでスターサファイア
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