窓から差し込んできた光に眉を顰めて奈楠は体を起こした。ふぁ、とあくびをして顔を洗う。一通りの準備を済ませれば、食堂へと向かった。昨日もあれほど食べたというのに朝になればとてもお腹が空いている。とんでもない消化力だ、と思わず自分を褒めそうになった。


食堂へ入ろうとすれば、ばったりと科学班の面々と出会う。おはよう、と挨拶をした。


「あ、そーだ奈楠。メシ食ったら指令室来てくれないか?室長が呼んでるんだ」
『え?じゃあ今行くよ』
「えー、いいの?食べなくて」
『いつでも食べられるし…まぁ、大丈夫だよ』
「ごめんなー奈楠」


笑いながら共に指令室へと向かう。さりげなく送ってくれたようで、ありがとう!と言って彼らと別れた。コンコンとノックして、反応を待つ。すると、珍しくコムイは起きていたのか「どうぞー」と言う声が聞こえてきた。


『奈楠でーす。何かありましたか?』
「!あ、奈楠ちゃんか!ちょうど良かったー」


室内を見れば、コムイの他にもう一つの小さな人影。髪の毛をツインテールにしていてエクソシストの団服を来ているところを見れば……


(リナリーだ!!!)


思わず頬が緩む。しかし、対照的にリナリーはこちらを見ようとしない。コムイの服をキュッと握っていた。そんなリナリーの背を押すように、コムイは話す。


「ほら、リナリー。昨日も言ったでしょ?この子が新しく入団した、エクソシストの女の子だよ」
「……うん……」


まだ人と話すのが怖いのだろうか。無理もない、あんな実験をさせられては。そう思いながら、リナリーに近づいていった。リナリーの前に立って、徐に膝を下ろす。リナリーを見上げて彼女の両手を優しく包んでこう言った。


『初めまして、リナリー。私は奈楠。貴女と同い年だよ!初めて来たばっかりで分からないことだらけだけど、私と友達になってくれる?』


彼女の不安を溶かすように、柔らかく笑った。そんな奈楠の笑顔にホッとしたのだろうか、リナリーはようやくこちらを見て笑ったのだった。


「…うん!よろしく、奈楠!」
『リナリーは笑顔が似合うよ。忘れないでね』
「えへへ………」



コムイは驚いていた。直ぐにリナリーが心を許した、この小さな使徒に対して。それと同時に安堵した。これでリナリーも、頼れる仲間が出来ただろう。心の底から、奈楠に感謝した。



リナリーは言った。奈楠は天使さまだ、と。私の世界を色づけてくれた、大切な姉のような人なのだ、と。それからリナリーは毎日のように奈楠と行動を共にした。奈楠も、リナリーといる時間が大好きなようだった。



妹のようだと思った。その愛らしい行動や言動の一つ一つが、とても愛しいのだ。この捕われの少女を、救いたい。傍にいたいと、心の底から思ったのだった。まるで依存だ、と思った。


「奈楠…、ずっと、私の傍に、いてくれる?」
『もちろん。私はずっと、リナリーの傍に居るから』


8歳の少女達は、幼いながらも約束のコトバを交わした。その約束は、天使の羽を鎖で縛り付けた。しかし、それでも良いと思った。……大切な彼女の笑顔を守れるのなら、なんだって。








友情トパーズ

((貴女がいない世界は、なんて))

((とてもじゃないけれど考えられない))
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