自室へ戻り、ベッドに身を投げ出した。


『…ねぇ“紅”?私はアンタの2番目の適合者なんだよね?』
【どうしたんですか?いきなり】
『…いや、ちょっと気になって…さ』


気にしないで、と言って会話を止めた。なんだか、知らなくてもいい事を知る気がして、気が引けたのだ。


【…主様が、適合者だから。…それだけですよ】


そう聞こえた声音はなんだか頼りなさげで。思わず“紅”をギュッと握り締めた。そうすればわぁ!?と頭の中で声をあげる“紅”に笑った。なんなんですか、一体!?と怒ったような“紅”になんでもないよー、と返す。こんな感じの会話が少しだけ長めに続いたのだった。





奈楠が眠りについた後、“紅”はそっと、奈楠が気付かない位の小さな声で呟いた。






【……“彼女”とそっくりだから…なんて言ったら、嫌われちゃうもんなぁ……。それだけは絶対に、嫌だもん】






魂まで本物かと見間違える位、“彼女”とそっくりな奈楠に、思わず惹かれたのだ。また、“彼女”と会えるのではないかと淡い期待をしていたのだ。長年連れ添ってきた前適合者。“彼女”の記憶(メモリ-)は、誰かに移植されたのだと“彼”は言っていた。その移植された誰か……“宿主”に出会うことが、“紅”にとっての願いだった。その“宿主”が、奈楠であれば良いと、ずっと思っていた。


その記憶(メモリ-)が完全に復活すれば、“彼女”の人格は宿主を侵食し、“彼女”も完全に復活する。その宿主には悪いが、犠牲になってもらうしか、他に手立ては無いのだ。


まだその宿主が誰なのか分かっていない“紅”は、自分が選んだその選択が、いつかとても後悔することになるとは知らずにいた。運命は、ゆっくりと廻り始めたのだった。








叫びのゲーキーライト

(さぁ、一体、“彼女”はだぁれ?)
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