コムイと共に科学班フロアに戻れば


「もー、どこ行ってたんスか?室長!」
「奈楠ちゃんの身体検査行ってきたんだよー!サボってたわけじゃないもん!」


ね!奈楠ちゃん?と振られれば苦笑して頷く。リーバーは頭に手を当ててはぁ、とため息をついた。


「ったく、行くなら声かけてってくださいよ!」
「ごめんってば〜」
「後は俺らに任せて、仕事してください!」
「リーバーくんの鬼ーーー!」
「室長ぉぉぉ、ハンコぉぉぉ!」
「待ってるんスからぁぁぁ!!!」


思わず吹き出せば、それに気付いたリーバーが眉を下げる。ポンと頭に手を乗せられて、微笑む。


「さぁて、次はイノセンスの検査だ!」
『お願いしまーす!』
「あぁ、任せとけ!えー…っと、奈楠は寄生型だったな」
『あ、えと、寄生型と装備型…』


驚いた顔をしたリーバーに奈楠は続けた。


『イノセンス、4つあるの』
「…ぁんの巻き毛……ッ!大事なことは早く言えよ…!」


コムイから聞いていなかったらしく、リーバーの握った書類がグシャ、と音を立てた。アハハハハ……と思わず苦笑する。リーバーは額に手を当てて、体制を立て直した。


「はぁ、気を取直して4つだな。寄生型と装備型の数は?」
『寄生型が1つに、装備型が3つ。水分を武器化するタイプに刀型と、ブーツと……、……』
「…ん?どうした?」
『いや……、…えっと、回復?系?』
「なんで疑問系なんだよ」
『何て表せばいいか、分からなくなっちゃって』


頭をかけば、ハハハ!と少し笑われる。


「取り敢えず、キューブじゃないなら加工は必要なさそうだな。へブラスカの所には行ったんだろ?」
『うん。昨日…行った』
「OK。故障とかあったら、直ぐに言ってくれ!俺らが責任をもって、直すからな!」
『…ホントに、何から何までありがとう』


そう言った奈楠の頭を、リーバーはグリグリと撫で付ける。手を離せば、髪の毛がぐしゃぐしゃになっていた。頬を膨らませてリーバーを見る。


「悪い悪い!ま、いいから甘えとけ!」
『……班長……』
「さ、イノセンスの力を見せてもらおうかね〜」


湿気た話は無しだ!とでも言うようにニカッと笑って告げたリーバーに、奈楠は大きく頷いた。






「まぁ、まずは寄生型からだな」
『……“水龍”発動。水ノ球(ウォ-タ-ボ-ル)』


奈楠がそう言えば、足に埋め込まれた聖痕が淡く光り出す。用意されたコップの水がふわ、と浮いて、空中に球となって現れた。おお、と感嘆の声を漏らすリーバーに、ニヤリと笑う。パチンと指を鳴らせばその水球は消滅した。


『水自体がイノセンスになるから、これでAKUMAを包んで破壊します。酸素濃度も調節できるので、人間にも有効です』
「なるほどなぁ……。でも基本、体内の水分しか使えないんだろ?いつも水は携帯しとかなきゃな」
『半径1kmくらいだったら、体外の水分も使える…はず』
「了解。他に出来ることは?」
『…訓練してけば増えると思う。他のイノセンスもね』


ふぅ、と椅子に腰掛ける。流石に初めてのコントロールは疲れる……。体力つけなきゃなぁ、と考えていた。ガリガリと書類に書き込んでいくリーバーを見つめる。あ、左利きなんだ。とふと思った。


「はい次!…何にしようか?」
『…じゃあ回復?系で。…“治癒の祈り”発動、プロテクション!』


奈楠の体が淡く光り出し、リーバーは目を丸くする。徐に奈楠はリーバーの持っていた羽ペンを手に取り、それを自分の腕に振りおろした。


「ば…っ!何して……っ!!」
『?ああ、大丈夫大丈夫。ホラ!』


そう言って慌てたリーバーに腕を見せれば傷一つついていない。おかしいな、と目を擦ってみても変わらなかった。そんなリーバーを奈楠は可笑しそうに見つめる。


『この技は対象者を、どんな攻撃からも守る絶対の保護膜。人以外も守るなら、ドーム型の保護障壁もあるよ。…それに、傷や怪我を癒すことも出来る』
「……便利なこった」


流石はイノセンス、と呟いたリーバーにうんうん、と同意する。


実際、昨日の夜に自室でイノセンス自身から出来ることを聞いていなければ、今ここで出来ることなど一つも無かったのだが。そう考えて、頭の中でありがとうと言えば、各各の反応が返ってきた。


紅【主様のお役に立てて光栄です!】
治【主、俺に出来ないことはないっす!】
跳【奈楠チャンの為だからね〜♪】
水【…我は水を求む。早急に摂取してくれ】


はいはい、と適当に相槌を打てば、リーバーが不思議そうにこちらを見てきたのでなんでもない、と返しておいた。

イノセンスの力

(一人で喋ってたらとんでもなく痛い子だからね)
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