「……まぁ、イノセンスについての説明はこんなところだ。……それで、キミのイノセンスのことなんだが……」


真剣な声音に思わず息を呑む。


「……キミが持っているイノセンスの内、二つは今まで教団にあったものなんだ」
『…………、え?』


告げられた事実に呆然とする。


「キミが教団の敷地内に現われたのを見計らったかのように、この二つのイノセンスはヘブラスカの元を飛び出していったんだ」
「新たな適合者として現われた…お前に反応…したんだろう…。そして、最も重要なのは…、“対になるイノセンス”のことだ…」
『“対になるイノセンス”……?』


鸚鵡返しのように反復する奈楠に頷き、話を続けるコムイとヘブラスカ。


「今教団には、あるイノセンスの適合者がいるんだが…、お前のイノセンスと、その子のイノセンスが、“対になるイノセンス”なのだ……」
「同時期に別々の場所で発見されてね。その二つのイノセンスは、教団で出会った瞬間に共鳴し始めた。…これは推測だが、片方が発動出来ないともう片方も発動出来なくなるんじゃないかと思っているんだ」


その証拠に、リナリーは今まで発動出来なかったのに、今日になっていきなり発動出来るようになった……。これは確信に近い。そう考えて、コムイは奈楠を見つめる。


『……その、適合者の子に、会えますか』
「……ああ、キミが一緒に戦ってくれると言うのなら」


僕たちは喜んでキミを歓迎しよう。


「一緒に世界の為に頑張りましょう、…一銭にもなんないけどね」
『……これから、よろしくお願いします』


そう言って、奈楠はコムイの手を取った。


「ようこそ黒の教団へ!」


奈楠はしっかりとコムイの手を握った。


「そうそう、その適合者の子は、ボクの可愛い妹なんだ。教団には女の子が少ないから、ぜひ友達になってやってくれないかな」


そう告げるコムイの表情は酷く優しげで、見ているこちらの胸がしめつけられるようだった。そんなコムイに奈楠は微笑んで、


『……もちろんです。…早く会いたいな』
「そして、もう1つ大切なこと…。その、首にかかった金属の板があるだろう…。発動したら…刀に変化しなかったか…?」


その問いかけに、コクンと頷く。その反応を見たヘブラスカはやはりな、と言って


「そのイノセンスは…、2年前に死亡した、エクソシストが使っていたものだ…。新たな適合者として…、大切に使ってくれ…」
『……もちろんです』


ヘブラスカの言葉に頷けば、彼女はホッとしたようにして


「奈楠……、お前に、神の加護があらんことを…」
「現在、エクソシストはキミの入団で15人となった。殆どは世界各地に任務で点在してるけど、そのうち会えることもあるだろう」


仲良くしてやってくれ、と言うコムイに眉を下げて笑った。










神の加護があらんことを

(囚われの少女を、心の底から助けたいのだ、と)
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