初めて見る昇降機に恐る恐る乗り、コムイの後ろに立つ。段々と高度が下がっていき、辺りは室内だというのに真っ暗になった。そして、暗闇に目が慣れてきた頃に視界に入ったもの。……それは、


「イ、イ、イノ……イノセンス……」
『(うわああああああああ!!本物おおおおおお!!!!)』


ぼんやりと白い光を身に纏ったヘブラスカと、大元帥の姿。思わずコムイの方を向くと、彼はニコ、と笑った。


「さぁ、奈楠。キミの価値をあの方々にお見せするんだ」


ふと感じた浮遊感に体を竦める。気付けば、自分の体はヘブラスカによって浮かされていた。


「この感じ……間違いない……。この子が“対になるイノセンス”と…“例の彼女”のイノセンスを持っている……」
「……やはり、そうだったのか」


体を探られるような感覚に、ヘブラスカの腕から抜け出そうとするが、もちろんそんなことは出来るはずもなく。


「安心しろ……、私はお前の敵じゃない…」
『(知ってます!!そりゃあ知ってるますけどおおおお!!!!)』


そう言ったヘブラスカは奈楠の額に自身をくっつけ、


「……4つのイノセンスの…適合者か…!!」
「なんだって…!!?4つも……!!?」


ヘブラスカが全てのイノセンスの数値を測り終え、驚愕の声音で奈楠に告げる。


「…お前の今のイノセンスの同調率は、4つとも全てもう少しで臨界点を突破しそうだ…!こんなことは初めてだ……」
「……!この歳でそんなに……!?」



わぁお。最強設定さっすがー……



「“彼女”のイノセンスは……、お前を新たな適合者として選んだのだな……。しかも容姿まで似ているとは…、皮肉なことよ」
『“彼女”……?』
「…今はまだ、知らなくていい……」


そう言ったヘブラスカは、酷く悲しげだった。コムイも同様に、眉を下げている。


「本多奈楠……。お前は…そう遠くない未来で、“神の心臓の先導者”となるだろう……。そしてお前はまだ、“黒白からの来訪者”…だ。…私にはそう、感じられた……」
『黒白からの、来……訪者……』


突如、パチパチと拍手が聞こえて


「いやぁー!!凄いね奈楠ちゃん!!ヘブラスカの予言はよく当たるんだよー!」
『……室、長』



バガァン!!!!!!



『……一発、蹴らせてください…』
「お、おぅふ…。もう、蹴ってるじゃないか……」


……うん。今ならコムイを殴ろうとしたアレンの気持ちがわかる。これは、殴りたくなるわ……。痛いよ〜!!と涙ながらに話すコムイに苦笑いする。こういう事なら先に言ってください。と言えば、気を付けるよ〜、と笑って返すコムイ。


「……イノセンスについて、説明しよう」


キミのイノセンスについても、ね。と、真剣な顔つきをするコムイを、奈楠はジッ、と見つめた。







使徒の誕生

(私が来たことで)

(物語が変わってしまうのではないかと)

(とても、不安になったのもまた事実)
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