「な…なんだよ…ッ、突然……ぐ……ッ」



支柱に叩きつけられたアレンは、“神ノ道化”を発動させていた。打ち付けた頭部からは血がとめどなく流れ、頬を伝う。頭がグラグラと波打ち、支えていた左腕の力が抜け、アレンは床に落ちる。奈楠はすぐさまアレンの元に駆け寄る。



「(あれ、僕…いつの間に発動したんだ…?)」
『アレンッ!!……頭打ってる……!ジッとして、今すぐ治…………ッ!?』
「!?」
『(……ッ、な……にコレ……!?)』



突然反応したアレンの左眼と奈楠の耳。奈楠の頭には「ォオォ……」と何か咆哮音の様なものが響く。顔を上げれば、こちらに左腕を掲げている大柄の男。この音の大きさに反響してくる入射角、まずこの男からしているのは間違いない。奈楠は自身の記憶を必死に呼び起こした。



「何してる、ゴウシ」
「ち……副作用だ。イノセンスに反応して、発動した……ッ」
『(何……?今までのAKUMAの叫びとは明らかに違う……。ハッキリとした言葉は聞こえないけど、でもこれは確かにAKUMAに内蔵された魂の声……。…………ッそうだ、この人達は……ッ!!!)』
「なんのマネだ、ゴウシ」



アレンと奈楠がそれぞれ考えていれば、2人の目の前に立ちはだかったリンクとティム、リィム。ティムとリィムはあからさまに威嚇している。



「アレン・ウォーカーは今、私の任務対象だぞ。何の理由があって“鴉”のお前達が彼に手を出す!?」
「え、“鴉”!?」
『…………“リカバリー”。…取り敢えず治したけど、ちゃんと医務室に行くこと。……分かった?』
「ッありがとう、奈楠……」



奈楠が“治癒の祈り”を発動させれば、アレンの傷は塞がり、ようやく血は止まる。アレンと目を合わせれば、彼の目は「奈楠の耳も反応した?」と問いかけてくる。奈楠は肯定するように、ゆっくりと首を縦に振った。



「“ハワード・リンク監査官”か」
「発動を解け、ゴウシ」
「着任早々マダラオの説教くう気か」



トクサとキレドリの説得も相まってか、ゴウシはようやく左腕の発動を解く。その瞬間、アレンの左眼も治まり、奈楠の頭に響いていた唸り声のような咆哮も、治まる。



「(左眼が治まった……!?)」
「何の騒ぎであるか?」
「ありゃ」
「どしたんさ〜アレン?血出てんぞ」
「『来んの遅ッ』」



わらわらと奈楠達の周りに集まってきたラビ達。状況が全く読めていないらしく、アレンや奈楠、マリにどうしたのかと聞いている。何も見ていなかったのか、と少し呆れ顔の奈楠達。ようやくトクサ達に気が付いたラビが問う。



「なんさ?こいつら」
「失礼しましたアレン・ウォーカー。我らは人体生成により半AKUMA化した者ゆえ、イノセンスを受けつけぬのです。何卒、ご容赦を」
「半、AKUMA化……だと……(まさか、あの“卵”が……)」



リンクはトクサの言葉をゆっくりと復唱し、アレンは呆然としてトクサ達を見つめた。奈楠はグッ…と下唇を噛み締め、若干俯く。ギュ、と握られた拳は少しだけ震えていた。



修練場に居た神田は、第三エクソシスト達を真っ直ぐに見つめていた。




























「“トクサ”、“キレドリ”、“ゴウシ”……そして、“テワク”と“マダラオ”。この5名を第三(サ-ド)エクソシストとして役務に就かせて頂きます。これは教皇の御下命ですわ」



微笑みを浮かべてコムイとバクに告げるレニーに、即座にバクが言葉を返す。コムイは口元で手を組み、眉を顰めて唇を噛み締めていた。



「ルベリエの仕業だろうッ!北米支部にいる俺様の元部下から連絡があったぞ!」
「…………(AKUMAの卵を狙った、ノアによる旧本部襲撃……。あの時“卵”の欠片を入手していたとは……貴方の言った“価値”とはこれだったのか!?ルベリエ……!)」
「何故だレニー……!教団の負の遺産をタブーとして封印したのは我々だったろう!何故また……!9年前のあの“惨劇”を忘れたのか!!」



忘れてはならない過去が脳裏に浮かぶ。眉を顰めて苦しそうに声を絞り出すバクを、レニーは無言で見つめ返す。呟くように紡ぎ出されたその言葉は、重いものだった。



「……あの本部襲撃で、それが間違いだったと分かったのよ。……人間がAKUMAに勝つには……、“代償”も必要だわ。北米支部が造り出した“半AKUMA種”。第三エクソシストとして、我らの新たな戦力となりましょう」





















憎愛から生まるる

(どうして、こうなってしまうの)
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